目黒区民センターと建物高さ規制の考察

2024年6月25日

しろめくろめの会世話人 高村重明

2024年6月19日から目黒区内6カ所で「これからの目黒にふさわしい建物の高さに関する説明会」が行われています。同時にチェンネルめぐろTV(YouTube)でもビデオ(約22分間)で説明を見ることができます。目黒区における建物の高さ規制の現状と今回の見直しの目的、20mの高さ規制の地域なのに「新たな目黒区民センター」を50mにできる理由、アトラスタワー(164m)などの高層マンションを目黒区内に建てることができる理由などについて調べてみました。

1、用途地域とは

都市の土地は都市計画法によって12の用途地域に分けられています(目黒区は8つ)。建物の用途・建ぺい率・容積率・高さ制限などを定めることで住環境の保全や利便性を向上させるためです。23区平均と目黒区を比較すると目黒区は住居系が81.11%と23区平均の59.12%を大きく上回っています。特に第1種低層住居専用地域が40.26%と23区平均の19.37%の倍以上となっていて良好な住宅地であることがわかります。目黒区民センター周辺は第2種住居地域に指定されています。

2、高度地区とは

 高度地区とは都市計画法によって建築物の高さの上限あるいは下限が制限されている地域のことです。目黒区は全域が高度地区に指定されています。用途地域でも第1種低層住居専用地域は建物の高さが原則10メートル以内(場所によって12メートル以内)となっているように高さの規制もありますが建物の高さの規制は別に地域ごとに決められています。例えば目黒区区民センターは第二種住居地域で建物の高さは20メートルまでとなっています。

※2004年6月24日~住居系に適用。2008年11月28日~すべての用途地域に適用。

建物の高さ規制は表の絶対高さ規制のほかに北側の斜線規制などもあります。また、敷地の条件によって絶対高さ規制は1.2倍、1.5倍、2.0倍に緩和されることがあります。

今回目黒区は第1種低層住居専用地域を除いて高さ制限を見直そうとしています。その理由として挙げているのはOAの普及、住宅性能の向上などで床が高くなったことや自然災害への対応などで基準を緩める必要があることなどです。しかし高さ規制はそのままでも階数を減らすことで1階あたりの高さは増やせます。そうすると不動産会社のもうけが減ったり㎡当たりの単価が増えたりするという問題が発生します。いずれにしても目黒区内に高層マンションをどんどん建てるための見直しではなさそうです。では目黒区の絶対高さ規制の最高限度60mを超える中目黒駅前のアトラスタワー(164m)などはなぜ建てることができたのでしょうか。

3、市街地再開発事業とは

絶対高さ規制の例外として市街地再開発事業があります。市街地再開発事業は低層の木造建築物などが密集しているような市街地で敷地の一体化、共同建築、公園・緑地の整備などで快適・安全な市街地を作ることです。アトラスタワーは上目黒1丁目市街地再開発事業(2000年計画決定、2011年完了)のなかで建てられました。目黒区における市街地再開発事業は上目黒1丁目(1.4ha)のほかに上目黒2丁目(GTタワー120m、1.2ha、1994年~2002年)、大橋地区(大橋ジャンクション、155mと100mのマンション、2007年~2010年)、自由が丘1丁目29番地(3.1ha、2020年~2026年(予定)、60mのビル)の4事業があります。自由が丘以外は2008年に目黒区が全地域で絶対高さ規制を決める前ですが規制があっても市街地再開発であれば高さ規制に関わりなく高層建築物を建てることができます。目黒区における5番目の市街地再開発事業として中目黒駅前北地区市街地再開発準備組合が2000年12月に立ち上がっています。現在の東急ストアのある一角です。ビルの高さは約160mが予定されています。https://www.nakamegurokita.jp/

※市街地再開発事業は県ではなく市の管轄であり、清掃事業が移管された2000年の特別区自治権拡充で市街地再開発事業も区に移管されるはずでした。市街地再開発事業は多くの利権が伴います。東京都は移管に最後まで反対し都の事業として残りました。神宮外苑事業を請け負っている三井不動産グループに東京都の幹部9人が天下っていることが明らかとなっています(WEB東京民報2023年11月26日号)。

4、地区計画とは

市街地再開発ならアトラスタワーのような超高層ビルが建てられます。しかし市街地再開発は対象地域をいったん更地にして一体化し、公園や空き地、ビル、公共施設などを再配置しなければならず何年もかかる大掛かりな開発となります。そこで目黒区民センター一帯の土地利用計画は「地区計画」とすることになりました。地区計画とは、都市計画法に基づいて定められる地区単位の都市計画です。地区独自の方針や目標、公共的施設、建築物に関する制限などを独自に定めることで地区の特徴や目的にあったまちづくりを進めることができます。地区計画は区で決めることができます。これまで目黒区には祐天寺栄通り地区計画など11の地区計画がありました。12番目となる「目黒区民センター周辺地区地区計画」(地区がダブっているのはまちがいではありません)は2022年10月に準備会が発足し2023年6月21日に「目黒区民センター周辺地区まちづくり協議会」が設立されました。2023年12月に「目黒区民センター周辺地区まちづくり提案書」が区に提出され「目黒区民センター周辺地区地区計画(原案の案)」がつくられました。目黒区民センターの基本計画が素案(2023年6月)の段階からどんどん進められていたということです。https://www.city.meguro.tokyo.jp/documents/14228/genannoan_gaiyou.pdf

目黒区民センター周辺地区地区計画(原案の案)では目黒区民センター周辺の約8.5haの地域を3つの地域に分け、それぞれに地域の用途や高さ、容積の制限(緩和)、などが決められています。その中で新たな区民センターの高さは目黒区民センターの基本計画どおりの50mとなっています。担当の都市整備課に確認したところ地区計画における建物の高さの上限は特になく周辺環境や目的などで決まるとのことでした。ですから当初の基本計画では高さが規制の上限60mを超える70mとなっていたわけです。これからも学校跡地などの区有施設に高層ビルを建てることは地区計画をつくることで理論的には可能なわけです。

地区計画のもととなる「まちづくりルール」について2023年11月に地域の関係者へのアンケート調査が行われています。その中の自由意見欄に「美術館を縮小せず、更に充実させてほしい」という意見や「この辺りは緑が多いので引き続き大切にして、さらに増やす方向でいって欲しい」「街づくりもけっこうだが限られたお金の使い方は如何かと思う。小学校、中学校の耐震化、区立保育園の増設充実化等、区全体の予算の使い方は考えるべき」などの意見があがっています。https://www.city.meguro.tokyo.jp/documents/9901/megurokyougikai_anke-tokekka_matome_1.pdf

今後の流れは2024年度に事業者が決まり基本設計が決まったあと2025年度に地区計画原案が発表され地域で説明会、意見募集が行われ最終的な地区計画となります。新たな目黒区民センターの最終的な決定はその時ということになります。

しろめくろめ

しろめくろめの会(明るく住みよい目黒を考える会の略称)の世話人の一人が運営するホームページです。目黒区政に係る情報を発信しています。

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