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2024年6月25日

しろめくろめの会世話人 高村重明

2024年6月19日から目黒区内6カ所で「これからの目黒にふさわしい建物の高さに関する説明会」が行われています。同時にチェンネルめぐろTV(YouTube)でもビデオ(約22分間)で説明を見ることができます。目黒区における建物の高さ規制の現状と今回の見直しの目的、20mの高さ規制の地域なのに「新たな目黒区民センター」を50mにできる理由、アトラスタワー(164m)などの高層マンションを目黒区内に建てることができる理由などについて調べてみました。

1、用途地域とは

都市の土地は都市計画法によって12の用途地域に分けられています(目黒区は8つ)。建物の用途・建ぺい率・容積率・高さ制限などを定めることで住環境の保全や利便性を向上させるためです。23区平均と目黒区を比較すると目黒区は住居系が81.11%と23区平均の59.12%を大きく上回っています。特に第1種低層住居専用地域が40.26%と23区平均の19.37%の倍以上となっていて良好な住宅地であることがわかります。目黒区民センター周辺は第2種住居地域に指定されています。

2、高度地区とは

 高度地区とは都市計画法によって建築物の高さの上限あるいは下限が制限されている地域のことです。目黒区は全域が高度地区に指定されています。用途地域でも第1種低層住居専用地域は建物の高さが原則10メートル以内(場所によって12メートル以内)となっているように高さの規制もありますが建物の高さの規制は別に地域ごとに決められています。例えば目黒区区民センターは第二種住居地域で建物の高さは20メートルまでとなっています。

※2004年6月24日~住居系に適用。2008年11月28日~すべての用途地域に適用。

建物の高さ規制は表の絶対高さ規制のほかに北側の斜線規制などもあります。また、敷地の条件によって絶対高さ規制は1.2倍、1.5倍、2.0倍に緩和されることがあります。

今回目黒区は第1種低層住居専用地域を除いて高さ制限を見直そうとしています。その理由として挙げているのはOAの普及、住宅性能の向上などで床が高くなったことや自然災害への対応などで基準を緩める必要があることなどです。しかし高さ規制はそのままでも階数を減らすことで1階あたりの高さは増やせます。そうすると不動産会社のもうけが減ったり㎡当たりの単価が増えたりするという問題が発生します。いずれにしても目黒区内に高層マンションをどんどん建てるための見直しではなさそうです。では目黒区の絶対高さ規制の最高限度60mを超える中目黒駅前のアトラスタワー(164m)などはなぜ建てることができたのでしょうか。

3、市街地再開発事業とは

絶対高さ規制の例外として市街地再開発事業があります。市街地再開発事業は低層の木造建築物などが密集しているような市街地で敷地の一体化、共同建築、公園・緑地の整備などで快適・安全な市街地を作ることです。アトラスタワーは上目黒1丁目市街地再開発事業(2000年計画決定、2011年完了)のなかで建てられました。目黒区における市街地再開発事業は上目黒1丁目(1.4ha)のほかに上目黒2丁目(GTタワー120m、1.2ha、1994年~2002年)、大橋地区(大橋ジャンクション、155mと100mのマンション、2007年~2010年)、自由が丘1丁目29番地(3.1ha、2020年~2026年(予定)、60mのビル)の4事業があります。自由が丘以外は2008年に目黒区が全地域で絶対高さ規制を決める前ですが規制があっても市街地再開発であれば高さ規制に関わりなく高層建築物を建てることができます。目黒区における5番目の市街地再開発事業として中目黒駅前北地区市街地再開発準備組合が2000年12月に立ち上がっています。現在の東急ストアのある一角です。ビルの高さは約160mが予定されています。https://www.nakamegurokita.jp/

※市街地再開発事業は県ではなく市の管轄であり、清掃事業が移管された2000年の特別区自治権拡充で市街地再開発事業も区に移管されるはずでした。市街地再開発事業は多くの利権が伴います。東京都は移管に最後まで反対し都の事業として残りました。神宮外苑事業を請け負っている三井不動産グループに東京都の幹部9人が天下っていることが明らかとなっています(WEB東京民報2023年11月26日号)。

4、地区計画とは

市街地再開発ならアトラスタワーのような超高層ビルが建てられます。しかし市街地再開発は対象地域をいったん更地にして一体化し、公園や空き地、ビル、公共施設などを再配置しなければならず何年もかかる大掛かりな開発となります。そこで目黒区民センター一帯の土地利用計画は「地区計画」とすることになりました。地区計画とは、都市計画法に基づいて定められる地区単位の都市計画です。地区独自の方針や目標、公共的施設、建築物に関する制限などを独自に定めることで地区の特徴や目的にあったまちづくりを進めることができます。地区計画は区で決めることができます。これまで目黒区には祐天寺栄通り地区計画など11の地区計画がありました。12番目となる「目黒区民センター周辺地区地区計画」(地区がダブっているのはまちがいではありません)は2022年10月に準備会が発足し2023年6月21日に「目黒区民センター周辺地区まちづくり協議会」が設立されました。2023年12月に「目黒区民センター周辺地区まちづくり提案書」が区に提出され「目黒区民センター周辺地区地区計画(原案の案)」がつくられました。目黒区民センターの基本計画が素案(2023年6月)の段階からどんどん進められていたということです。https://www.city.meguro.tokyo.jp/documents/14228/genannoan_gaiyou.pdf

目黒区民センター周辺地区地区計画(原案の案)では目黒区民センター周辺の約8.5haの地域を3つの地域に分け、それぞれに地域の用途や高さ、容積の制限(緩和)、などが決められています。その中で新たな区民センターの高さは目黒区民センターの基本計画どおりの50mとなっています。担当の都市整備課に確認したところ地区計画における建物の高さの上限は特になく周辺環境や目的などで決まるとのことでした。ですから当初の基本計画では高さが規制の上限60mを超える70mとなっていたわけです。これからも学校跡地などの区有施設に高層ビルを建てることは地区計画をつくることで理論的には可能なわけです。

地区計画のもととなる「まちづくりルール」について2023年11月に地域の関係者へのアンケート調査が行われています。その中の自由意見欄に「美術館を縮小せず、更に充実させてほしい」という意見や「この辺りは緑が多いので引き続き大切にして、さらに増やす方向でいって欲しい」「街づくりもけっこうだが限られたお金の使い方は如何かと思う。小学校、中学校の耐震化、区立保育園の増設充実化等、区全体の予算の使い方は考えるべき」などの意見があがっています。https://www.city.meguro.tokyo.jp/documents/9901/megurokyougikai_anke-tokekka_matome_1.pdf

今後の流れは2024年度に事業者が決まり基本設計が決まったあと2025年度に地区計画原案が発表され地域で説明会、意見募集が行われ最終的な地区計画となります。新たな目黒区民センターの最終的な決定はその時ということになります。

2024年6月10日

しろめくろめの会世話人 高村重明

2024年6月2日(日)に行われた港区長選挙で6期目をめざした自民・公明が推す現職を無所属・新人の清家愛氏が1,528票差で破る予想外の結果となりました。その結果について分析してみました。

候補者名     所       属       得票数   得票率

清家愛   無所属(元区議、立憲、共産自主支援) 29,651票     48.73%

武井雅昭 無所属(現職、自民、公明推薦)     28,123票    46.22%

菊地正彦 無所属(元都議)             3,070票       5.04%

保守が強い港区だったが

港区は2010年から2022年の間に住宅地の地価が1.65倍と東京都で一番上昇しています(目黒区は1.36倍)。ところが人口は2000年の約16万人から2020年の約26万人へと20年間で1.63倍増えています(目黒区は。1.15倍)。区民の平均収入は約1,185万円で23区平均の約712万円を大きく上回り23区1位です(目黒区は約639万円で5位)。つまり社長や管理職など高収入の住民が増えていると思われます。そのため政治的傾向は保守的で2023年の区議会議員選挙での自民党の得票率は30.29%と目黒区の自民党の22.77%を上回っています。直近の総選挙(2021年、小選挙区1区と2区)でも港区では自民が39.89%の得票率で第1位でした。都議選(2021年、定数2)でも自民党候補は28.79%の得票率を得て第1位で当選しました。

現職区長が17%も得票を減らしたのは

今回の区長選挙で落選した武井雅昭氏は元港区職員(区民生活部長)を経て2004年に55歳で区長選に初当選して以来5期20年間区長を務めました。2004年の最初の選挙のときは有効投票にしめる武井氏の得票率は41.81%でしたがその後の得票率は2008年71.30%、2012年77.74%、2016年76.83%、2020年63.46%と信任投票のような結果でした。今回武井氏が8,734票、得票率にして17.24%減らしたのはなぜでしょうか。第1に推薦政党の減少です。これまで武井氏をずっと支援してきた国民民主、都民ファースト、社民が推薦しませんでした。自民と同列に見られたくなかったのでしょう。第2に自民党の活動の弱さです。裏金問題など区民からの風当たりが強く目黒区長選挙でも自民党議員は地域でほとんど動きませんでした。第3は多選批判です。武井氏が当選すれば23区最多の青木目黒区長の6選に並ぶところでした。

港区にしては「高投票率」が勝利に貢献

では当選した清家愛氏の29,651票はどこから生まれたのでしょうか。第1は投票率です。30.62%という投票率は一般的には低投票率ですが港区ではそうはなりません。前回(2020年)は30.04%とかろうじて30%を超えましたがそれまでは5回とも20%台でした。特に武井氏が3期目に挑戦した2012年の区長選挙は22.13%とワースト記録となりました。このときの投票者数は37,625人で武井氏は77.74%にあたる29,250票を獲得しています。今回武井氏が得票した28,123票とほぼ同じです。ですから今回の投票率は30.62%でしたので2012年のときから増えた23,219人がほとんど清家氏に投票したということです。女性の投票率も前回より0.67%、票にして1,344票増えています。第2は共産党と立憲民主党の自主支援です。清家氏は2011年に初当選した時は民主党でした。当選後「みなと政策会議」という会派を立ち上げ自ら幹事長となりました。2018年に民主党が解散してからは無所属となっています(みなと政策会議は2019年の時点で立憲民主4人、国民民主3人、無所属3人の10人。2023年4月以降みなと政策会議は解散し、新たに「みなとみらい会議」という会派が国民民主3人、都民ファースト1人、こどもの党1人、無所属2人の7人で立ち上がっています。清家氏は無所属ですが2023年の区議選後は立憲民主党という会派に属していました(清家氏が区長選に立候補したので現在は3人)。共産党はこれまでの6回の区長選挙で独自候補を擁立してきました。得票は5,488票(2020年)から11,803票(2008年)と一定の支持層があります。今回は清家氏を自主支援し候補を擁立しませんでした。第3は都民ファーストが候補を出さなかったことです。目黒区では2024年4月の区長選挙に都民ファーストの都議が立候補し、結果として現職区長の当選を側面支援する結果になりました。港区でも都民ファーストは2021年の都議選(定数2)で女性候補が18,254票を獲得し2位当選しています。もし彼女が多選批判を掲げて立候補していれば清家氏の当選は難しかったと思われます。

票の動きを推測すると

以下、私が推測した票の動きです。前回と今回の投票者総数比(h=60,844人÷58,078人=1.047)を前回の武井氏の票36,857票にかけると今回とるはずだった票38,589票が出ます。そこから今回の武井氏の票28,123票を引いた①10,466票が清家氏に行ったと考えます。菊地正彦氏は2回連続立候補しています。同じように前回票5,437票×h(1.047)=5,692票。ここから今回得票した3,070票を引いた②2,622票が清家氏に行ったと考えます。前回立候補した大滝実氏(共産推薦)、飯田佳宏氏、柏井シゲタツ氏の3氏は今回立候補していないので合計15,785票×h(1.047)=③16,526票が清家氏に行ったと考えます。①+②+③=29,614票で今回清家氏が獲得した29,651票に近くなります。まとめると現職候補の4分の1以上が投票先を変えたのと共産党が立候補せず自主支援としたこと、都民ファーストが立候補しなかったことが清家氏の当選の大きなポイントになったと思われます。

2024年5月29日

しろめくろめの会世話人 高村重明

2024年4月21日に行われた目黒区長選挙では残念ながら西崎翔氏の当選はならず青木英二氏の6選を許す結果となりました。青木氏は同時選挙(区長と区議)にするため3年で辞職し自分は立候補しないという1期目に掲げて実施しなかった公約を再度掲げましたがその前に辞めさせる方法はないでしょうか。また目黒区民センターの再開発、美術館の解体もなんとか阻止できる方法はないでしょうか。地方自治には選挙による間接民主主義だけでなく直接民主主義の方法がいくつかあります。それらについて検討してみます。

直接請求は大きく分けて3種類

①長の解職請求(議会解散、議員解職、主要な公務員の解職もあります)②条例の制定・改廃請求③事務監査請求があります。それぞれについて根拠、請求できる人、成立の条件、請求の効果を見てみます。

① 長の解職請求(リコール) 

根拠は憲法第15条 地方自治法第81条 請求できる人は有権者であり署名は受任者にならないとできない 成立の条件は有権者の1/3以上の署名(有権者40万人以下の場合、それ以上は若干の緩和条件あり)、議会の1/2以上の賛成 期間は都道府県・政令指定都市が2か月、市町村は1か月 成立した場合、長は解職されますが再立候補は可能

ウイキペディアによると地方自治法が施行された1947年から最近の2023年まで必要な署名を集めて本請求に至ったのは長の解職が193件、議員の解職が101件、議会の解散が193件ということです。長の解職193件のうち都道府県と政令指定都市、特別区はゼロ。市が16件、177件(91.7%)が市町村です。成立要件が有権者の3分の1以上という条件は規模が大きくなればなるほど厳しいからです。2002年に40万人以上の部分が6分の1に、80万人以上の部分が8分の1に緩和されましたがそれでも厳しさはさほど変わりません。2024年4月21日の目黒区長選挙で投票した人は有権者約23万人のうち約8万2千人、青木氏に投票した人は2万5439人、西崎氏は1万9132人でした。目黒区の場合有権者は約23万人なのでリコールを成立させるには1か月で区長選挙に投票した人全体に相当する約7万7千人分の署名を集めなければなりません。登録した受任者が決まった用紙でしかできません。よっぽど区民世論が盛り上がっていなければ不可能な数字です。そのうえ直接請求(長や議員の解職、議会の解散、条例の制定など)は違反すると厳しい罰則があります。署名の妨害やおどしなど4年以下の懲役・禁固または100万円以下の罰金、署名の偽造や増減など3年以下の懲役・禁固または50万円以下の罰金、地位利用は2年以下の禁固または20万円以下の罰金、定め以外の署名簿の使用は10万円以下の罰金です。2020年に愛知県知事に対するリコール(あいちトリエンナーレ2019での表現の不自由展が反日的だとして河村名古屋市長、高須クリニック院長の高須克弥氏などが中心に運動)が起こりましたが2か月で集まったのは必要な約86万7千人分に対し約43万5千人分でした。しかも調査の結果83,3%にあたる36万余人分が無効とされました。組織的な偽造が発覚し事務局の男性が懲役2年執行猶予4年(求刑懲役2年)の有罪となりました。

② 条例の制定・改廃請求 

根拠は地方自治法第74条 請求できる人は有権者であり署名は受任者のみ 有権者の1/50以上の署名 期間は①と同じ 成立した場合、長は意見を付けて20日以内に議会を開会し審議しなければなら

条例の制定・改廃請求は有権者の50分の1と条件は緩いのですが成立しても議会で審議されるだけで否決される可能性があります。例えば大阪府四条畷市では小中学校の廃止の是非について校区の住民投票条例制定の請求が1か月で必要数(有権者※44,800人の50分の1の896人)の4.5倍、4,067人の有効署名を集めましたが議会で否決されました((2016年)。例えば目黒区で目黒区美術館を残す条例を成立させるには有権者を23万人とするとその50分の1の4,600人の署名を1か月で集めなければなりません。100人の受任者を組織したとして1人46人以上です。いろいろな制約があり違反すると厳しい罰があります。署名が成功したとして議会の過半数の賛成を得なければなりません。議会に対する働きかけも必要です。(※必要数から逆算)

③ 事務監査請求 

根拠は地方自治法第75条 請求できる人は有権者であり署名は受任者のみ 有権者の1/50以上の署名 期間は①と同じ 事務全般が対象 行為があった日から1年以内の制約なし 不服でも住民訴訟はできない

住民監査請求は財務会計上の問題に限られていますが事務監査請求は自治体の事務全般が対象です。また住民監査請求には行為があった日の1年以内という制限がありますが事務監査請求には時間的制限はありません。しかし有権者の50分の1以上の署名が必要であり成立してもその自治体の監査委員が監査を行うだけで要求が必ずしも実現するわけではありません。例えば日野市ではごみ処理計画の白紙撤回を求める事務監査請求が必要数(有権者146,699人の50分の1である2,934人)の3.7倍にあたる10,873人の有効署名を集めましたが①住民の声を無視している、②市民参加がゼロ、③「ごみゼロ政策」に反する、④環境破壊、健康被害が広がる、⑤建設費が倍近くなる、⑥法や条例に反するの6点を日野市監査委員会はいずれも退けています(2015年)。

直接請求以外の直接民主主義的方法

④ 住民監査請求

住民監査請求は事務監査請求と違って有権者でなくても住民であれば個人でも外国人でも企業でも可能です。しかし対象が財務会計上の行為に限られています。住民訴訟を行うためには住民監査請求を経なければならないので住民訴訟をするために住民監査請求を行うような側面があります。しかし最近の例では大阪湾で死んだクジラの処理を巡って2,000万円の見積もりにもかかわらず8,000万円で大阪市が交わした随意契約にたいして起こされた住民監査請求では金額ありきで進められたとして市民の訴えを認め市長に再調査するよう勧告する事例がありました。当時の市長は維新の会の松井一郎氏で処分業者は維新に献金をしていました。

⑤ 住民訴訟

住民監査請求の結果や結果に対する首長の措置に不服があるときは住民訴訟を起こすことができます。訴訟の内容としては①差し止めの訴訟、②処分の取消または無効確認、③怠った事実の確認、④損害賠償、不当利得返還請求の4種類です。目黒区での実例では須藤甚一郎元区議(2020年死去)が旧庁舎の売却価格が不当に低いとして区を訴えた裁判の資料等の経費を政務調査費から支出したのは違法とする返還命令処分について争った住民訴訟があります。結果は地裁、高裁が須藤氏の全面勝利、最高裁も支出のうち訴訟の印紙代と切手代のみ認めないが他は須藤氏の主張を認めほぼ勝利しました。訴訟費用は目黒区の負担となりました。この住民訴訟はある区民からの須藤氏の支出に対する住民監査請求を認めた区の監査結果に区が従ったことから起こされました。住民監査請求はそういう使われ方もされるということです。

⑥ 請願

憲法第16条、地方自治法第124条に基づいた権利ですが請願が議会で議決されても長に送付してその実現に努力するよう求めるだけで強制力はありません。国や都などへの要望(請願)は議決されれば関係機関に送られます。

2023年度の目黒区議会への請願は2件 「目黒区が原告となっている裁判を取下げ、被告に謝罪することを求める請願」「消費税の廃止とインボイス制度の廃止を求める意見書を政府に送付することを求める請願」 2件とも紹介議員はこいでまあり議員で2件とも不採択でした。2022年度の請願は1件 「重度障碍者の就労・就学支援に関する請願」 白川愛区議が紹介議員で主旨採択となりました。2019年度から2021年度の請願はありません。

⑦ 陳情

法令に根拠はありません。目黒区では議員の紹介がないものを陳情としているだけで請願と陳情の扱いに区別はないとされています(目黒区議会のホームページより)。しかし係争中の案件に関する陳情を議会運営委員会で審議しないことを決めています(山村まい区議のホームページhttps://yamamuramai.com/2023/06/seigan_hisasihayatin/)。そのため陳情から必ず審議される請願に切り替えており、区議会のホームページの表現は正確ではありません。自治体によって陳情の扱いは様々です。伊東市議会では持参した場合は議会にかけるか参考配布とするか議会運営員会で判断するが、郵送によるものはすべて参考配布とするとなっています。

2023年度の目黒区議会への陳情は40件あり、採択8件、不採択23件、継続審議4件、撤回承認4件、審議未了1件となっています。採択された陳情にはがん患者への助成金制度創設、「不登校生」の教育の場の設置、テニスコートの存続、北方領土や竹島領土の啓蒙、拉致問題の啓蒙などがあります。

⑧ その他

直接民主主義ではありませんが議会による長の不信任決議と長による議会の解散という制度があります(地方自治法178条)。まず議員の3分の2以上の出席による議会で出席議員の4分の3以上の同意があれば長の不信任決議をすることができます。長は10日以内に議会を解散するか10日たっても議会を解散しないと失職します。議会が解散された場合、選挙後最初の議会で議員の3分の2以上の出席のもとその過半数以上で不信任決議を議決すれば長は失職となります。保守系議員が多数を占める議会が革新系首長を不信任するケースが多く、1999年足立区長、2002年長野県知事、2003年徳島県知事、2007年東大阪市長が該当します。長野県の田中康夫氏以外は失職後の選挙で敗れています。足立区長の例では1996年に吉田万三氏が保守分裂もあって当選しました。1999年に不信任決議が議決され、議会を解散しましたが少数与党(共産党のみ)のなかで失職しました。同年の出直し選挙と2003年の区長選挙にも立候補しましたが当選はできませんでした。

2024年5月28日

しろめくろめの会世話人 高村重明

選挙結果(2024年5月26日投開票)

候補者名   党派名   得票数    得票率   結果

西崎翔   立憲民主党  19,526票   35.64%  当選

青木英太    無所属    13,538票      24.71%  当選

井沢京子     自由民主党    11,039票      20.15%  次点

宮本栄      日本共産党    7,730票          14.11%

須藤健太郎     無所属       2,947票     5.37%

誰もが驚いたのは自民党の唯一の女性候補が落選し、無所属の青木候補が当選したことでしょう。投票率24.19%は前回都議選(2021年7月4日)の43.03%を大きく下回り、今年4月21日の区長・区議補選の投票率36.52%も下回りました。期日前投票は投票総数の27.24%で4月の区長・区議補選の25.05%より高く、組織票や固い支持票は投じられたと思われます。女性の投票率は23.80%で平均を0.39%下回りました。区長・区議補選のときは平均を0.31%上回っていたので女性票が少なくなったのも自民候補に不利になったのかもしれません。

前回の都議選結果(2021年7月4日)を補選投票数54,780÷前回都議選投票数98,227=55.76%で補整した結果と今回の補選結果を比べ票の変化を次のように考えました。移動は結果から逆に推測しています。

伊藤悠氏(都ファ) 前回得票数23,117票×55.76%=12,890票 今回立候補していないので西崎氏に9,329票、青木氏に2,098票、須藤氏に1,463票が移動

斎藤泰宏氏(公明) 前回投票数16,515票×55.76%=9,208票 今回立候補していないので青木氏に全部移動 

鈴木隆道氏(自民)と栗山芳士氏(自民)前回合計23,851票×55.76%=13,298票 今回自民から立候補した井沢京子氏は11,039票だったので減少した2,259票は青木氏に異動

星見定子氏(共産)前回16,038票×55.76%=8,942票 今回宮本氏(共産)は7,730票だったので減少した1,251票は西崎氏に移動

西崎翔氏(立憲)前回16,044票×55.76%=8,946票 今回19,526票となったので伊藤氏から9,329票、星見氏から1,251票が移動

以下あくまで私の推測です。自民党の票は前回の都議選の2人を合わせると23,851票あり、投票率が減った分を減らしても13,298票あるはずでした。しかし裏金問題や目黒区に関係ない落下傘候補であること、女性票が減ったこと、青木候補の父の青木区長が町会や商店街に働きかけたことなどから2,200票以上減らし、その分が青木氏にまわったと思われます。自民党は4月の区議補選で25,767票を獲得し次点となった新井佳代子氏をなぜ都議補選に出さなかったのでしょうか。新井氏なら当選できる可能性が十分にあったと思います。それができないのが今の自民党の体質なのでしょう。前回の都議選で一番得票数が多かった都民ファーストの伊藤氏の票はどうなったのでしょうか。区長選挙の分析でも指摘したのですが今年4月の区長選挙では本来西崎氏の支持票が反自民的なイメージの都民ファーストの伊藤氏にまわったと思われます。今回は伊藤氏の7割程度が西崎氏に、残りは無所属の青木氏と須藤氏にまわったのではないでしょうか。青木氏は公明党の全部と自民党、都民ファーストの一部をまとめ当選したと思われます。共産党は星見氏の票を補正した票から1,200票ほど減らしています。星見氏の個人票もあったでしょうし、宮本氏が地区委員長という肩書なので共産党の選択肢をつくるための立候補と思われたのかもしれません。4月21日の目黒区長選挙での市民と野党の共闘の善戦、定数1の区議補選での立憲の勝利、4月28日の東京15区の衆院補選での市民と野党の勝利、5月26日の静岡県知事選挙の勝利と目黒区での都議補選の結果が都知事選挙への蓮舫氏の出馬表明(5月27日)へとつながったと思います。目黒から自民党政治を終わらせ国民本位の政治を実現するうねりを引きつづき強めていきたいと思います。

しろめくろめの会 高村重明

2024年2月21日(日)に投開票された目黒区長選挙の結果は次のとおりでした。

氏名   得票数  得票率 年齢  所属  経歴

青木英二 25,439票 31.38% 69歳 無所属 現職(5期)

伊藤悠  20,369票 25.13% 47歳 無所属 国民民主、都民ファースト推薦 元都議

西崎翔  19,132票 23.60% 40歳 無所属 立憲民主推薦、共産・社民・生活者ネットワーク・緑の党・新社会・みんなの目黒区をつくる会・区政を変えよう目黒区民の会支持 元都議

河野陽子 12,149票 14.99% 61歳 無所属 自民推薦 元区議

瀧下隆行  3,953票 4.87% 41歳 会社員

投票率は36.21%で前回の33.33%を2.88%上回りました。特に女性は36.52%で前回の32.89%を3.63%上回りました。男性は35.85%で前回33.84%の2.01%増でした。

青木英二さんは前回支持した自民党が河野陽子さんを推薦し、公明党は自主投票となったため政党の推薦は受けられませんでした。多選批判もあり前回の30,178票から4,739票減らしました。しかし当選することができたのは現職5期の知名度と4年間の事前運動、3年で辞職し区議会議員選挙と同時にするという公約(1期目も掲げたが実施せず)、宣伝カーを使わず歩いて地域を回るなどの作戦が功を奏したと思われます。自民党の推薦を受けられなかったことも結果として良かったのかもしれません。

西崎つばささんが勝利できなかった原因は候補者決定の遅れにあると思います。みんなの目黒をつくる会が候補の一人として確認したのが3月11日(月)、8団体と政策協定を結んで正式に市民と野党の統一候補となったのが3月18日(月)で告示の27日前と有力4候補の中で最も遅れてのスタートとなりました。事前運動期間が青木英二氏は前回当選からの4年間、伊藤ゆう氏(2023年12月4日立候補表明)、河野陽子氏(2023年12月6日事実上の立候補宣言)は4か月間とすれば西崎つばさ氏の27日間というのは決定的な遅れといえます。それでも善戦できたのは市民と野党の共闘という目黒区では初めての運動の広がりにあったと思います。候補者の決定がもう少し早ければ結果は違っていたでしょう。初めて異なる団体同士の話し合いは困難で途中で何回も共闘が破綻しそうになったと聞いています。しかし共闘をあきらめず最後まで団結して進むことができたことは今後への大きな財産となったと思います。

2020年の目黒区長選挙では野党共闘(立憲、共産、社民、ネット)の山本ひろこさんが26,908票、有効投票の35.55%を獲得しました。野党共闘プラス市民なのに西崎つばささんが19,132票となったのはなぜでしょうか。それは伊藤ゆうさんの存在が大きかったと思います。伊藤ゆうさんは「20年ぶりの新風を」「教育、環境、介護、公園の4つのKに取り組む」などを政策に掲げ、西崎つばささんとの違いが分かりにくかったように思います。西崎さんと伊藤さん二人の得票合計は39,501票で有効投票の48.74%に達します。伊藤さんが青木さんと本質的に同じということが伝わっていれば結果は違ったと思います。そのことは同時に行われた区議会議員補欠選挙でも明らかです。立憲民主党の橋本しょうへいさんは28,786票を獲得し、自民党の新井かよこさんの25,767票を上回って当選しました(定数1)。この橋本しょうへいさんの28,786票が本来の市民と野党共闘の票と思われます。西崎つばささんだけが反自民反青木区長という事実が有権者に伝えきれていれば勝利できた可能性が高いと思います。

自民党推薦の河野陽子さんが12,149票しか得票できなかったのはなぜでしょうか。区議補選の新井かよこさん(自民党)の得票数25,767票の半分以下です。2023年の区議会議員選挙での自民党の得票数は23,709票ですので新井かよこさんはほぼ自・保守票をまとめたといえます。では河野陽子さんに投票しなかった13,618票の自民・保守票はどこにいったのでしょうか。町会、自治会、商店街などの自民・保守票が区議は新井かよこさんに、区長は青木英二さんに投票したと思われます。この13,618票に区議会議員選挙での公明党の票10,654票を足すと24,272票となり青木英二さんの得票25,439票とほぼ同じになります。主義主張ではなく勝てそうな候補に乗るというのが公明党の常道です。自主投票とした公明党は実際は河野さんにはまったく入れず、全部青木さんに投票したのではないでしょうか。

世田谷区長、中野区長、杉並区長と続く市民と野党の共闘による市民派区長誕生の流れは続いています。目黒区長選挙でも市民の運動が保守分裂というかつてない事態を引き起こしました。勝利するには区長選挙での市民と野党の共闘の歴史が浅かったのです。3年後行われるであろう目黒区長選挙こそ目黒の市民パワーの真価が問われると思います。

私たちが望む正義と連帯の目黒区

2024年こんな目黒が欲しかった しろめくろめビジョン

 

明るく住みよい目黒を考える会(しろめくろめの会)では2024年4月に予定されている目黒区長選挙に向けて多くの方々からご意見をお聞きし、青木区政の実態と区民のための区政のあり方について検討してきました。それらをもとに「こんな目黒が欲しかった しろめくろめビジョン 私たちが望む正義と連帯の目黒区」と題して区政政策(案)をまとめました。多くの皆様のご意見をもとにさらに充実し、民主的区政実現の一助になればと思います。

 ビジョン案をつくるにあたって2022年6月に杉並区長に当選した岸本聡子さんの「公共の回復」「地域主義の復権」という考えに強く影響されました。岸本さんの近著から一節を引用します。「ひとことでいえば、『公共』の役割と力を取り戻すこと。そして、地域の住民が主体となって、自分たちの税金の使いみちや公共の財産の役立て方を、民主的な方法で決めていくということです。〈中略〉私が長く暮らしていたヨーロッパでは近年、こうした民営化の流れを止め、住民が地域の公共財産を自分たちで民主的に管理する仕組みを作り直そうとする動きが各地で生まれています。そして、こうした住民運動を母体として自治体ごとの市民政党がつくられ、首長や地方議会の選挙で勝利し、国の政府やEUといった大きな権力にも厳然として物申していく―このような現象は、『再公営化』『ミュニシパリズム(地域主権主義、自治体主義)』、そして『恐れぬ自治体(フィアレスシティ)』という言葉でとらえられています。」(大月書店刊「地域主権という希望」より)

〇日本国憲法の平和、民主主義、基本的人権、地方自治を守り暮らしの中に生かします

日本国憲法の3原則に地方自治を加えました。憲法第8章地方自治に「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する」(第93条)とあるので首長は議会が選ぶのではなく直接区民の投票で決めることができるのです。国政が小選挙区制により民意が反映されにくくなっているなか大統領選挙のように直接投票で日本の政治を変える鍵が地方自治体にあります。

〇すべての子どもの人権と女性の権利が守られる目黒区に

【国や都に】

・子どもにとって最もよいことは何かを第一に考え行うこと

国連の「児童に権利に関する条約」は1989年に国連で採択され現在196の国、地域が批准している世界で最も広く受け入れられた人権条約です。日本は1994年に批准しています。差別の禁止、子どもの最善の利益、生命、生存及び発達する権利、子どもの意見の尊重の4原則のひとつからとりました。

・公的サービスの質の低下を招き子どもの安全を損なう産業化をやめ公立保育園運営費、建設費国庫補助を復活すること。

公立保育所運営費は小泉政権時代三位一体改革の一部として2004年に一般財源化(地方交付税化)され、国1/2、都1/4、区1/4負担であったのが全額区負担となりました。私立保育所の負担割合は変わりませんでした。公立保育園を新設する場合も2005年に一般財源化され、国1/2、都1/4、区1/4が全額区負担となりました。私立保育園の負担割合は国1/2、都1/4、設置者1/4となりました。国庫負担の一般財源化は公立保育園民営化の引き金となりました。23区は地方交付税の不交付団体なので一般財源化はさらに不利になります。しかし三位一体改革は地方財源の充実という面もありました。また不交付団体ということは財政に余裕があるということであり一般財源化即公立保育園削減ということにはなりません。

・都区財政調整制度を利用した民営化、委託化促進をやめること。

本来市町村で行う水道、消防、病院などの事業を東京都が行う代わりに市町村税である固定資産税などの税金を東京都が徴収しています。また23区の格差を是正するために標準となる区の歳入・歳出を計算し各区に配分しています。この都区財政調整制度の中に公立保育園の民営化などのリストラを盛り込むことで各区の行革を進め、都の取り分を確保しています。本来23区が自主的に決めるべき配分を都が決めていること自体が問題ですが少なくとも各区のリストラを推進する計算根拠を改めるべきです。

・女性差別撤廃条約選択議定書を批准すること。

女性差別撤廃条約は1979年に国連で採択され日本は1985年に批准しています。しかし実効に乏しかったため個人通報制度や国連の委員会による調査制度などが盛り込まれた条約の選択議定書が1999年に採択されました。条約締結国189カ国中115カ国は選択議定書も批准していますが、日本は女性のみ一定期間再婚禁止、夫婦別姓を認めないなど、国内の裁判に影響があるとして選択議定書を批准していません。あわせて国際人権(自由権)規約の第1選択議定書(個人通報)と第2選択議定書(死刑廃止)の批准もすべての国民の人権を守るために求められています。

【私たちは】

・児童の権利に関する条約、こども基本法、目黒区子ども条例に基づいた子どものための施策を行います。

子ども基本法は日本国憲法と子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)(日本は1994年批准)に基づいて作られた国内法です。2023年4月に発行し同時に子ども家庭庁が発足しました。目黒子ども条例は2005年に全国で4番目、23区でも世田谷区に次いで2番目に制定されました。しろめくろめの会の宇田川妙子さんも公募区民として参加した「子ども条例を考える区民会議」が条例の考え方をまとめました。条例には子ども総合計画の策定や子ども施策推進会議の設置などが盛り込まれ実行されています。

・区民の財産である直営の保育園、児童館・学童保育クラブを維持拡大します。

10年前の目黒区の保育園は区立22園、私立9園でしたが、2021年には区立17園、私立80園と逆転しています。区立は最終的に10園になってしまう予定です。原因は国の補助金が区立だと出なくなったためです。目黒では株式会社立の4園、3社で総額3,437万円の補助金不正受給事件がおきました。株式会社立への運営補助金を他区の保育園建設や本部への上納金に使い人件費を30%台にする例も見られます。私立の水準を上げるためにも、また公立を希望する多くの保護者の期待に応えるためにも区立保育園の維持拡充が必要です。22カ所あった公立学童保育クラブのうち8カ所が民営化され今後3年間で6カ所が民営化される予定です。目黒区は学童保育(・・)クラブとして単に預かるのではなく児童の成長をはぐくんできました。民営化でその成果が引き継がれていません。施設数が希望数にたいして圧倒的に少なく50人定員に120人が利用しているところもあります。民営化後契約通り人が配置されているか、運営がされているか保育園のように都と区によるチェックではなく、区のみで実施するため、保育園と比べるとチェック機能が弱い民営化となっています。直営の維持と施設の拡充が必要です。児童館も2カ所が民営化計画にのっていますが地域に根ざしてきた児童館の民営化に反対の声が起きています。目黒区民センターの管理運営が運営会社にまかされると児童館、学童保育クラブは運営会社が委託先を決めることになり区が責任を持てなくなります。目黒区に児童相談所が設置される場合20人といわれる保育士や児童指導員の配置が予定され、保育園や児童館等の職員を活用していくとされています、しかし正規職員は欠員状態であり児童相談所を支援するには直営の保育園、児童館、学童保育クラブの維持と欠員を生じさせない体制づくりが不可欠です。

・安全でおいしい学校給食の復活のため正規職員による直営校を再建します。

学校給食調理業務の委託がはじまって24年が経ちました。最近3年分を検証したところ異物混入74件、アレルギー食ミス14件など122件も事故がおきていました。年々技術が低下していると指摘されています。会社のもうけを出すため人件費が安く抑えられています。給食は生きる力の源です。子どもへのしわ寄せは許されません。また文科省の調査「防災に役立った学校給食」で取り上げられた11自治体のうち7自治体が直営を残しています。委託では災害時に対応できません。直営の拠点校を設けることでおいしくて安全な学校給食を復活します。

・統合方針「望ましい規模の区立中学校の実現を目指して」を子どもの利益の視点から見直します。現在進められている西・南部地区の区立中学校統合については、子ども、保護者、関係者の意見を再度聞いて決定していきます。

2027年度中に7中を9中に、8中を11中に統合する案が進行しています。初めから統合ありきの「学校統合推進課」の名称、長く危険な道路、競争が激しくなる、地元の中学がなくなることのコミュニティに与える影響、7中、8中にある特別支援学級も移動するなど問題があります。当事者である子どもの意見が聞かれていません。目黒区子ども条例にあるとおり「子どもは、自分にかかわりのあることについて意見を述べたり、仲間をつくったり、様々な活動に参加したりする権利が尊重されなければなりません」(第12条)。私立中学校への進学が増え区立の在籍率(2021年度50.3%)はさらに低下が予想されます。統合先の9中、11中は区界にあり不便な立地です。廃止になる7中、8中は便利な立地で市場価値も高く、これが「資産経営」を旨とする目黒区の真の狙いではないでしょうか。

・ジェンダー平等に取り組みます。LGBTQに役立つように男女平等参画条例を充実します。

SDGs(持続可能な開発目標)の重要なテーマでもあるジェンダー平等は社会的・文化的に作られた性別(ジェンダー)を取り払い、その個性と能力を発揮できる社会をつくることです。2023年の日本のジェンダー指数は146カ国中125位と過去最低です。目黒区は2002年に「男女が平等に共同参画する社会づくり条例」を23区で最も早く制定し区民とともに運動を進めてきました。2000年には条例の名称に「性の多様性の尊重」が追加されLGBTQの方が生きやすい社会づくりが求められています。

・学校給食費を無償化します。低農薬食材の利用や地産地消を進めます。

2023年6月30日現在、23区で学校給食の無償化を全く実施していないのは目黒区を含め4区だけです。2023年度の学校給食費は1食小学校低学年247円、中学年267円、高学年289円、中学生333円です。1年間200食として年間の給食費は低学年49,400円、中学年53,400円、高学年57,800円、中学生66,600円となります。低学年、中学年、高学年、中学生の4人兄弟だと1年間の家計への負担は227,200円に上ります。本来国が無償化すべきですがそれまでは目黒区も無償化にします。(目黒区は2023年10月から小中学校給食無償化のための補正予算を計上しました。)

・私立保育園の保育の質を確保するため保育所運営費における人件費率が一定以上の割になるように規制します。

世田谷区では、私立保育園に対する保育所等運営費助成金(区加算)の交付要件に、前年度の経常収入に対する人件費の比率が50%以上であることを設けています。「人件費は人件費に」、自治体が保育の質と保育士の処遇を担保し防波堤となっている取組です。目黒区でも同様の規制を設けることを要望しましたが、まったく聞く耳を持ちませんでした。

・子どもの貧困が問題になっています。義務教育の保護者負担を減らすことに取り組み、就学援助についても拡充します。

厚労省が発表した、2022年の子どもの貧困率(18歳未満の相対的貧困率)は全体では11.5%、ひとり親世帯では44.5%です。(OECD平均は31.9%)

日本国憲法第26条第2項は、義務教育は、これを無償とする。と定めています。ところが実際には、さまざまな費用負担が保護者にかかっています。制服や道具箱、アサガオなどの栽培キット、実験用教材、ドリル・ワークなどがその例です。金額も、ここ数年で大きく増えていることが報道されています。これらの私費購入分を補助する「就学援助」では十分に賄えない実態があります。区からの助成額を増やせないか検討します。

・保育園の定員割れにより園の運営に影響が出ています。NPOや地域の社会福祉法人の保育が継続できるよう対策を行います。

世田谷区では保育や介護事業の参入の条件に、地域の中で長年小規模に丁寧に保育事業を行ってきた非営利事業者、地域の福祉に社会福祉法人に限って参入していただくという方法が実施されています。こうした事例を学んで目黒区でも取り入れます。

また、定員割れに対する補助金の拡充も検討します。

〇だれもが安心して暮らせる目黒区に

【国や都に】

・生活保護の水準を憲法第25条にふさわしい基準に引き上げること。目黒区など家賃水準の高い地域の住宅扶助基準を実態に合わせて改善すること。

生活保護の基準は高齢者単身世帯で月131,680円、高齢者夫婦世帯で月185,480円です(2021年4月)。これでは物価の高い東京で暮らすのは困難です。特に住宅扶助は単身で53,700円と低く目黒区でアパートを見つけるのは至難の業です。結局目黒区を出て家賃の安い地域に転居せざるを得なくなっています。

・シルバーパスの2段階の所得段階を5段階程度に増やすこと。

2000年から有料となった東京都のシルバーパスは非課税か合計所得135万円以下の方は1,000円、それ以外の方は20,510円と極端に負担額に差があります。利用率は約46%(2018年 )ですが所得による段階を設けることによって負担を減らし利用者を増やすことが健康寿命を延ばすことにつながります。

・国民健康保険や後期高齢者医療保険の高すぎる保険料や医療費の負担軽減に特別区とともに努力すること。

2023年度の目黒区の国保料は最高で年104万円です。「高すぎて払えない」2018年から始まった都道府県単位化の下で、国保制度をめぐり、深刻な矛盾や切実な声が噴出しています。高すぎる保険料が滞納を生み出しています。国保は他の医療制度に比べて加入者の所得が低く個人負担には限界があります。公費負担を抜本的に増やし保険料を引き下げるよう求めます。均等割りは所得がない子どもにも一律に負担を強いる現代の「人頭税」です。当面18歳以下の均等割りを廃止すべきです。後期高齢者医療保険料や医療費負担の引き下げを求めます。

・東京都の都営住宅の削減計画を撤回させ、都営住宅の新規増設や建て替えを求めます。

目黒区は全都で最も都営住宅の少ない区です。石原都政以来22年間、新規建設はゼロ、団地の高齢化や超高倍率など居住者と入居希望者に大きな困難を押し付けています。小池都政が2022年3月30日、「東京都住宅マスタープラン」を発表し、都営住宅を2030年までに17万1千戸(現状は25万戸)とする大幅削減計画を強行しようとしています。

【私たちは】

・生活に困窮している人に生活保護制度の利用を促すため、積極的な広報や相談活動を行います。生活保護の申請がなされたときに本人の意思に反した扶養照会は行いません。

「生活保護の申請は権利です」というポスターを作成し、生活保護申請書をホームページでダウンロードできるようにします(魚沼市の例)。

「扶養義務の履行が期待できない」と判断される扶養義務者には、基本的には扶養照会を行わないということをホームページにも明記します(足立区の例)。

生活保護を利用できる世帯の方が利用できていない状況は、区の責任でもあります。何が利用の障害になっているのか調査し改善します。区として街頭生活相談を実施したり生活に困っている人がいないか地域を訪問しての聞き取り活動を強化したりします。窓口で待つ福祉だけではなく、「訪問する福祉」を実現します。

・障害者が65歳以降も障害者福祉サービスを利用できるようにします。高齢者福祉と障害者福祉の縦割りをなくし、総合的な地域ケア包括システムに発展させます。

65歳になると障害福祉よりも介護保険が優先され自己負担が発生するいわゆる「65歳問題」について2023年3月24日東京高裁は千葉市に住む73歳の障害を持つ男性の障害福祉の継続の訴えを認める逆転判決を下しました。目黒区でも本人の希望によって障害福祉を継続できるようにします。

・補聴器購入助成は所得制限なし、現物支給、専門家による装着支援を行います。

すでに18区が実施している高齢者の補聴器購入助成ですが目黒区もようやく2023年6月の議会で区長が実施を約束しました。すでに実施している区のなかで新宿区と江東区の利用が圧倒的に多くなっています。その特徴はお金ではなく補聴器を現物支給していること、所得制限がないか緩やかなことです。また補聴器を使うには言語聴覚士のいる医療機関での指導が必要です。江東区は1,000万円以上払って医師会に委託しています。難聴者は高齢者だけではありません。補聴器購入助成を18歳以上に拡大することを検討します。

・生活保護世帯に支給されている入浴券を近隣区の銭湯も利用できるよう契約を変更します。

生活保護世帯の法外援護として支給されている入浴券は目黒区内の銭湯でしか利用できません。東京都浴場組合と契約し直し近隣区の銭湯も利用できるようにします。

・区内の大きな病院を循環するバスを運行します。さんまバスを走らせる会とも連携します。

23区で自治体が関与するコミュニティバスがないのは中野区と目黒区だけです(ウイキペディア調べ。中野区は一般路線になり、目黒区はNPOが運行する自由が丘のサンクスネイチャーバスがあります)。厚生中央病院(三田1丁目)や東京共済病院(中目黒2丁目)を経由するコミュニティバスを走らせることで患者と家族だけでなく一般の区民の利便も向上します。北部地域から目黒区役所を経由する循環バスを走らせようと検討している「さんまバスを走らせる会」とも連携します。

・障害者の親なき後を支援する直営の障害者グループホームを設立します。

障害者が親なき後も安心して暮らせる障害者グループホーム(障害者総合支援法に基づく共同生活支援施設)は区内に特定非営利活動法人(NPO)立が3カ所、社会福祉法人立が5カ所、計8か所あります。需要は多いのですが個人や共同で新たに設立するのは多くの困難を伴います。区立の障害者グループホームを設立することで受け入れ枠を増やすと同時に新たな設立の援助をします。一人暮らしを希望する場合はサテライト型住居(障害者グループホームの近隣で支援を受けられる居室)を用意します。

・障害者の安全のためにも災害時の被災調査、避難経路の確保を行います。

・災害時避難について、避難所・避難施設の確保、災害弱者・帰宅困難者・女性・高齢者に配慮した避難施設整備に取り組みます。また、地域で炊き出しの拠点として活用できる小中学校を給食調理の直営を復活させ、本格的な防災拠点として整備します。

障害者が親なき後も安心して暮らせる障害者グループホーム(障害者総合支援法に基づく共同生活支援施設)は区内に特定非営利活動法人(NPO)立が3カ所、社会福祉法人立が5カ所、計8か所あります。需要は多いのですが個人や共同で新たに設立するのは多くの困難を伴います。区立の障害者グループホームを設立することで受け入れ枠を増やすと同時に新たな設立の援助をします。一人暮らしを希望する場合はサテライト型住居(障害者グループホームの近隣で支援を受けられる居室)を用意します。

・生活保護世帯も目黒区に住み続けられるよう低所得者への家賃補助制度を充実します。

生活保護の住宅扶助が大都市の実情に合わせて改善されるまでの間、障害者グループホームの家賃に国から支給される補助に自治体独自の補助を加えている例があるように低所得者に向けた家賃補助制度を充実します。

・福祉事務所のケースワーカーの配置を充実しきめ細かな生活支援を行います。

目黒区のケースワーカーは1人80世帯の生活保護世帯という基準ぎりぎりです。他区では基準が守られず事故が起きています。格差が広がり低額の年金受給者が増える中で生活保護を必要とする世帯が増加しています。人員配置を充実し人権意識、専門知識を深める研修等を行います。

・住まいは人権!高齢者等およびファミリー世帯家賃助成を改善します。

高齢者世帯等居住継続家賃助成は条件が厳しく抽選で当たっても家賃の20%を6年間しか支給してくれません。ファミリー世帯家賃助成は当選しても月2万円を3年間支給されるだけです。目黒区内の低所得者向き公営住宅は区営住宅595戸、都営住宅637戸(23区平均7,043戸)と他区に比べて圧倒的に少ないため家賃助成は大幅に改善する必要があります。

・目黒区居住支援協議会の事業を強化します。

2022年5月に設立された同会ですが、高齢者、介護者、生活保護の状況がわかるメンバーを含め、福祉政策との連携を強化しながら各事業を拡充します。

・区の職員住宅、区内の大企業の社宅などに空き家が目立ちます。調査して活用を検討します。

社員の福利厚生はもう必要なくなったのか?区内の社宅の空き状況を調査し、良質な住宅環境も多いので活用方法を検討します。

職員住宅は2020年度にすべて廃止されました。ヘルパーの住宅にと要求したら老朽化していると断られたそうです。改修するなどスピーディに活用方法を決定します。

・感染症から区民の命を守るため保健所を充実します。

新型コロナ感染拡大時の保健所のひっ迫は、命にかかわることでした。碑文谷保健センターの建替え先が決まっていません。

〇区の財産を企業のもうけのためでなく区民のために残し役立てる目黒区に

【国や都に】

・大企業のために自治体財産を提供するのはやめること。

政府は経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2015で社会資本や公共設備の整備・運営にPPP/PFI手法を優先的に導入することを決め、自治体にも固定資産台帳の整備や公的不動産の利活用などを求めました。翌2016年には総務省が「PPP/PFI推進アクションプラン」を策定、毎年改訂され現在に至っています。財界の要求に沿って自治体財産を大企業の利潤追求の手段としているのです。

・PPP/PFIの失敗例を検証し施策の是非を再検討すること。

PPP(公民連携)/PFI(民間資金活用型公共事業)事業は成功例のみが宣伝されますが多くの失敗、破綻事例が報告されています。その原因は需要の過大な見積もり、情報が公開されず外部チェックができない、事業者の破綻、発注者側の能力不足などです。PFI本家のイギリスは新たなPFI事業を中止しています。事業開始後も運営費を払い続けるため自治体(住民)の負担を少なくすることが目的なのに結果的に大きな負担を強いられることになります。

・神宮外苑再開発はやめ、伝統的景観と貴重な樹木を残すこと。

神宮外苑は戦後、国有地を国民が利用できアマチュアスポーツが安くできるなどの条件付きで明治神宮に譲渡された事実上の公共空間です。再開発ではラグビー場が屋内で人工芝、コンサートのできる施設になり新たな球場の脇の185メートルの高層ビルが上から見下ろします。1000本の貴重な樹木が伐採されイチョウ並木も球場が隣接するため枯れる恐れがあります。なぜ高層ビルを立てなければならないかの理由がありません。反対署名は21万筆を超えています。施設は耐震補強済で補修すれば使いつづけられます。三井不動産などの大企業のための再開発はやめ100年かけて作り上げた景観と樹木を守るべきです。

【私たちは】

・目黒区民センターの見直しは民間デベロッパーに丸投げせず区民とともに区民のために区が責任を持って進めます。

老朽化し改修を含めて検討が始まった目黒区民センターの見直しはいつの間にか小学校や周辺施設を取り込み、高さ70メートルの商業施設も含めた複合施設計画となってしまいました。商業施設がマンションであれば70年の定期借地権付きで分譲価格は1億円を超えるでしょう。超富裕層しか入れません。しかし60年も経てば老朽化しあと数年で更地になるマンションは誰も買いません。コミュニティも崩壊します。商業施設を入れれば区の負担が少なくなるといいますが上部にタワーマンションを併設した豊島区役所は周辺整備に多額の区費が投じられ区の所有面積は削られ区役所の意見は何も通らない狭く使いづらい庁舎でした。目黒区民センターも民間の利益を優先するため公共スペースは半減し極めて使いづらい施設になるでしょう。区民が使いやすい区民センターに作り直すのに税金を使うのがなぜいけないのでしょうか。民間施設はいりません。区有施設見直しのリーディングプロジェクトとして区民による区民のために目黒区民センターを実現します。

・区有施設見直し計画を見直します。学識経験者は公正に選定します。

・区有施設の使用料を抜本的に見直し、大幅に減額します。

2025年度改定に向けてパブリックコメントが実施されました。使用料の算定方法を見直し、使用料に資本的経費も算入する方向で検討が行われています。例えば中野区では、地域活動登録制度があり、公益活動(地域自治活動、健全育成活動、支えあい等の活動、環境保全活動)を行う区民団体が、その活動目的や内容を区に登録することにより、集会室等の使用料を免除されます。使用料の減免で区民の活動を応援します。

・公園の立体化は公園を区民から遠ざけ、災害時の避難場所にもなりえないことから反対します。

新たな目黒区民センターの基本計画(素案)では区民センター公園について「立体化等による公園の区域拡大も検討します。」とあります。都市公園法で立体公園が認められたのは中央区で3階建ての保育園の上に公園を作ったように土地確保の難しい大都市で公園用地を確保するためです。区民センター公園は1万㎡の広さがあり立体化する必要はありません。渋谷区の宮下パークは4階建ての建物の上に作られましたが夜間、年末年始は利用できません。これでは災害時の避難場所として機能しません。気軽に入ることができ災害時のよりどころとなる平地のままの公園とすべきです。

・公園のトイレを改修し、誰もが利用しやすくします。

2022年4月現在77%の公園等においてトイレの洋式化が行われているそうです。最近は園庭のない保育園の子どもたちも外遊びに利用します。早急に改修を進めていきます。

・図書館を基本方針に基づいて充実をはかります。職員の正規比率を高め、窓口業務は直営にします。

図書館は地域の文化のよりどころ、知識や歴史を集積する場です。行政改革の一環で2005年から貸出返却業務の民間委託が開始され、2015年には分館7館の全面委託が行われました。しかし、民営化が相容れないと直営に戻した自治体もあります。

今後とも

・教育機関として教育委員会の管理の下に政治的中立性を保つ。

・目黒区立図書館基本方針を充分に活かす。

・区民・利用者と図書館が密接な情報交換を通じてともに考え、ともに協力することを基本に充実を図ります。

また、民間委託により、司書知識の経験や蓄積が図られているか、レファレンス機能が落ちていないかなどの検証を行います。

〇環境にやさしく持続可能な目黒区に

【国や都に】

・原発、石炭火力発電は廃止し再生可能エネルギーに転換すること。

地球温暖化を防ぐためにCO2排出量を今すぐゼロにしなければ間に合わない時点にさしかかっています。しかし日本の発電に占める化石燃料(石炭、天然ガスなど)の割合は72.4%(2022年)であり、自然エネルギーは22.7%にとどまっています。原子力発電は4.8%ですが将来への負担、危険性から即時停止すべきです。エネルギー自給率を高めることは生活の安定にもつながります。

・太陽光パネルなど再生可能エネルギーはそれ自体の環境負荷の低減を工夫しながら積極的に設置を進めること。

CO2削減に再生可能エネルギーの利用は不可欠です。東京には多くの建物、駐車場等があり、太陽光パネルの設置が有力な方法です。一方で蓄電池に使用されるレアメタルの発掘、精製、再利用が環境に及ぼす影響や景観に与える影響を考慮し関係住民とともに利用拡大を進める必要があります。

【私たちは】

・温暖化対策推進都市を宣言し、具体化のための条例を作ります。

・今後建設する区の施設は木造など省エネ設計とします。

施設の屋根や壁、窓の断熱化、地熱利用などで省エネを進めます。最近11階建て44mの高層マンションが木材で建てられました。地震に強く火災にも強い工夫がされています。断熱効果もあります。高齢化した人工林を使用し後に植樹することでCO2吸収力も復活します。木造は鉄筋より短期的には割高ですが区の施設を率先して木造化することで利用者にも優しく環境保護のアピールもできます。

〇個人の権利を守り、開かれた目黒区に

【国や都に】

・返礼品目当てのふるさと納税をやめ、本来の姿に戻すこと。

2022年度のふるさと納税額は9654億円と1兆円に迫る勢いです。目黒区も約34億2千万円が流出しました(2021年度)。これは高齢福祉費の約6割に当たる大きな額です。雅叙園ホテル宿泊券などの独自返礼品を設けても目黒区への寄付は約3億5689万円でその差は埋まりません。本来見返りを求めない寄付であるべきふるさと納税が返礼品目当ての税逃れ行為になっています。高額所得者ほど利益が多いのも問題です。またふるさと納税の半分が経費として失われています。政府は是正するどころか2015年に上限を2倍にし、サラリーマンは確定申告不要としたため急増しています。ただちに返礼品をなくし、ふるさとへの寄付に変えるべきです。

・マイナンバーカードの強制はやめること。

マイナンバー制度は社会保障、税、災害対策のために全国民に割り振られた12桁の番号です。統一番号は先進国に例がなくこれ自体危険です。「医療保険、介護保険ともに、マイナンバーを活用すること等により、金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担を求める仕組みについて検討する」(骨太の方針2015)とあるように給付抑制が目的です。マイナンバーは企業も従業員や家族の社会保険、源泉徴収などのため取得しますが他人にむやみに提供するものではなく不正取得は罰せられます。マイナンバーカードは本来マイナンバーと身分を証明するためのもので取得は任意です。問題はマイナンバーカードに電子証明機能(ICチップ)が付けられていることです。カード表面には記載されていない健康保険証や公金受取口座、e-Tax、運転免許証などの機能をもたせることができます。カードの交付率はマイナポイントがはじまるまでは2割以下でしたが2度のポイント制度で交付率は7割になりました。そのためのマイナ経費は2兆円を超えています。さらに既存の健康保険証を廃止して事実上の強制とする考えを打ち出しました。カードが普及しないのは便利ではなくカードを持ち歩くこと自体が危険だからです。まずIT先進国のように安全で利便性の高いシステムの構築が先決です。

・都区財政調整制度の都区配分を役割分担にふさわしく見直すこと。

大都市東京では本来市(区)が行う消防や水道などの事業を東京都が行う代わりに市(区)税である固定資産税など3税を都が徴収しその55.1%を各区に配分する都区財政調整制度があります。都の取り分44.9%約8700億円は水道や消防の費用としては多すぎます。各区への配分も実質都が決めています。都区割合、各区配分とも23区主導で決められるようにすべきです。

・インボイス制度の導入中止を国に働きかけること。

インボイス制度の導入は、フリーランスで働く人や小規模な事業者が大きな影響を被ります。目黒区にも多いこれらの方たちの区民生活を大きく左右する問題です。導入の中止を働きかけます。

・「統一地方選挙」にふさわしく首長と議員の選挙の同時選挙が維持できるよう公職選挙法を改正すること。

自治体の首長と議員の統一地方選挙はスタートした1947年は100%同日でしたが首長の死去、辞職、解職等でずれて2019年時点で同日選挙は27.54%にまで低下しています。選挙を統一すれば費用も少なくなり投票率も向上します。そのために首長が任期途中でいなくなった場合残りが2年以上なら再度選挙を行い残り任期とする、2年未満なら副市長(副区長)が代行するなど公職選挙法を変える必要があります。(現在の公職選挙法では議員の任期が首長の任期の90日以内なら同時に行えるという規定〔第34条の2〕しかありません。)

【私たちは】

・国や東京都、大企業に必要な意見を伝えます。

憲法に保障された住民の生活と権利を守る最後の砦として格差の拡大や分断、弱者いじめ、富裕層優遇、環境破壊、平和の危機などに対して同じ志を持つ自治体と連帯し発言、行動していきます。

・区長公用車を廃止します。区長の行動を詳細に発表します。区長の「特権」と思われるようなものを全廃します。区長の退職金制度については例えば任期を重ねるたびに半減するなど検討し条例を改正します。

・区長選、区議選について、区独自で、候補者の公開討論会を開催します。

区長ひとりが利用する区長専用車(7人乗りの高級ワンボックスカー)は2022年度土日夜間含め355日稼働し2,187ℓのガソリンを消費し5トンのCO2を排出しました。かかった費用は1,372万円でほとんど運転手の人件費です。杉並の岸本区長は自転車で通勤し移動は庁用車にして専用車を廃止しました。目黒区ホームページの区長の行動は大まかすぎます。区長の行動を詳細に報告します。現区長は、2004年の区長選選挙公報において、区長の多選による権力腐敗を防止して透明性を確保し、公正な競争を実現できるよう、区長多選を禁止する条例を制定します。と掲げて当選しました。しかし、実現しませんでした。1期4年ごとに全額支給する区長の退職金制度を改めます。

・国による個人情報の一元的管理に反対します。すべての自己情報を自分で管理・コントロールできる情報システムを構築します。

自治体の情報化は個人の権利を守るための手段であり国家による個人の管理手段であってはなりません。99%の行政手続きがオンラインでできるエストニアではブロックチェーン(仮想通貨にも使用される暗号化技術)によって個人情報が守られ自分で追跡できます。ハッキングからも守られ事故は1件もありません。健康保険証が別人に紐づけられるミスが7400件も発生している日本のシステムは一から作り直すべきです。

・他区に比べ少ないホームページの行政情報を充実します。

例えば目黒区は例規集を掲載していますが、港区、世田谷区など10区では要綱集も掲載しています。区民の知りたい情報がすぐにわかるよう充実します。

・天下りを廃止し外郭団体への補助金を見直します。当面退職管理条例を策定し幹部職員の再就職について具体的に公表します。

最近10年間で目黒区役所を退職した幹部(部長、課長)は58人でそのうち37人が7つの外郭団体へ天下っています。毎年目黒区が外郭団体へ推薦者一覧名簿を渡し断られたことはありません。給料も「参考基準」として示し下回ったことはありません。幹部にも退職後目黒区で働ける再任用制度があります。2023年度から公務員の退職年齢が60歳から65歳に段階的に伸びることにともなって60歳になると部長は課長に、課長は課長補佐に降格する役職定年制がはじまりました。これで天下りしないと幹部ポストが不足するということもなくなりました。多くの関係団体は自立しており天下りを必要としていません。現職天下り幹部11人の給与総額は年7,924万円(試算)です。天下りを廃止すればその分補助金を削減できることになります。

・意見を聴くだけのパブリックコメントではなく合意をめざして区民と対等に検討を重ねます。

目黒区は重要な計画などについてパブリックコメント(意見公募手続制度)を行っています。しかし形式的で本当に区民の声を反映しようとはしていません。例えば目黒区民センター見直しで「美術館は補強工事もしたことですし、このデザインのまま残して下さい。」という区民の意見に対し「全体の用地を有効活用し財政負担軽減を図ることを基本としている」と聞く耳を持たず、5つある区分の4(意見の趣旨に沿うことは困難)に区分されてしまいました。なぜ美術館を残すべきなのか、区の回答のどこが問題なのか、必要なやり取りが全くなく、聞いた事として次に進んでしまいます。重要な計画は時間をかけ、対話を重ねる中で双方納得のいくように決めるべきです。主人公は区ではなく住民です。

・各種計画に使われている耳障りのよいスローガンやキャッチフレーズを中身のともなったものにします。

「さくら咲き 心地よいまち ずっと めぐろ」「めぐろかがやきプロジェクト」「みどりを感じる・みどりと暮らす・みどりに集う みんなが主役のみどりのまちづくり」など最近の施策にはイメージが先行しています。中身のともなったものになるよう努力します。

予算、決算について区民が知りたいこと、区民に知ってほしいことを分かりやすく説明します。

現在の目黒区の予算・決算書は具体的に知りたいことがわかりません。北海道ニセコ町では、その年の目玉事業や主要な施策だけでなく、すべての事業や町の財政状況について掲載した「もっと知りたいことしの仕事」を発行しています。つまり、町にとって都合の良いことだけでなく、すべてをお知らせしています。例えば、町の借金(町債)や貯金(基金)の額、町長や職員の給料の状況、他町村との比較なども「資料編」に掲載しています。

・区の職員は「コスト」ではなく「財産」です。区の職員が快適に仕事のできる環境を整えることは、区政全体にとっても基本です。パワハラ、セクハラ、差別が起きない職場環境をつくります。

公務員パッシングなどを通じて自治体が正規職員を減らし、業務も過重労働化していった結果、労働条件の劣化と住民サービスの低下という形でツケが回ってきました。

職員の働きやすさが住民にとっても住みやすさにつながります。職員がのびのびと働ける労働環境をつくるとともに、自由に意見が言えて、チームとして動けるような職場の雰囲気が大事です。職員の労働時間短縮のための業務の見直しやハラスメントのない職場づくりに取り組みます。職員の専門性を高めるため異動の本人希望尊重、資格取得支援などを検討します。

以 上

しろめくろめの会 高村重明

 青木英二目黒区長は最初の選挙に立候補するにあたり別々に行われていた区長選挙と区議会議員選挙を7000万円の無駄をなくし投票率を上げるため同日選挙にする、そのため当選したら任期途中で辞職するという公約を掲げました。ところが5期20年を過ぎてもその公約は実施されていません。なぜなのか。真実は闇の中ですが議事録やさまざまな状況証拠から検証してみました。

疑惑まみれの薬師寺区長の死亡で急遽区長選挙に

 2004(平成16年)年3月7日早朝当時目黒区長だった薬師寺克一氏(71歳)が死去しました。翌日薬師寺氏の信任が厚かった契約課長加藤義光氏がビル清掃会社から200万円の賄賂を受け取った疑いで逮捕されました(本人も認める)。薬師寺氏には黒いうわさが絶えませんでした。彼が立候補した最初の目黒区長選挙(自民・民主・公明・自由・社民・自連推薦)では薬師寺氏の選挙参謀だった元区長室長の菊谷伸夫氏と目黒区議会議員の横山大氏が公職選挙法違反(買収)の疑いで逮捕されました(起訴猶予)。旧目黒区役所と公会堂の売却をめぐり最高で111億円の購入希望があったのに三菱商事に72億円で売却し須藤甚一郎区議から訴えられました。また特別養護老人ホームの補助金不正受給事件(いわゆる青い鳥事件、東京都福祉局長が逮捕される)に絡んで元目黒区議会議員会が目黒区に約1,500万円の損害賠償を求める訴訟を起こしました。薬師寺氏は死亡の翌日出廷する予定でした。

区長区議同時選挙を公約に青木氏が当選

 薬師寺氏死亡に伴う目黒区長選挙(2004年4月18日告示、25日投票)の立候補者と得票数は次の通りです。前回選挙から1年半後で投票率は27.27%でした。

候補者名  年齢   肩書     党派   得票数  得票率 推薦・支持

青木英二   49 都議会議員    無所属  27,114票 42.26% 民主推薦

桜井雅彦   45 小杉元秘書      無所属   23,217票   36.19% 自民・公明推薦

中村正子   60 ジャーナリスト  無所属  13,826票 21.55% 共産推薦

 青木英二氏は立候補にあたり、区長選と区議会議員選挙を同時に行い7千万円の経費節減と投票率を上げるため任期途中で辞職することを公約の一つとしました。目黒区は1980年(昭和55年)に当時の塚本俊雄区長が死亡してからずっと選挙が別々に行われ、投票率が低下していたからです。しかし辞職しても再当選すると残りの任期は辞職しなかった場合と同じになる(公職選挙法第259条の2)ことに気が付き、途中から公約を辞職ではなく「解職」に変更します。区議会の区長不信任決議が採択され解職されて再選挙、再当選ならば任期は4年だからです。青木氏が最初このことに気が付いていなかったことは1期目の任期が迫った2008年3月18日の目黒区議会予算特別委員会で須藤甚一郎区議の「選管への問い合わせは当時選挙の経費節減についてのみかその他にもあったのか」という質問に安井選挙管理委員会事務局長が「問い合わせは経費のみでした。」と青木氏の目の前で答えていることからも明らかです。

責任転嫁されて議会は大いに怒るが…

 自分が辞職するのではなく、区議会に不信任決議をするよう同時選挙実現の責任を押し付けるという前代未聞の公約変更に区議会は大いに反発します。青木区長が当選後初の所信表明演説は2004年(平成16年)6月18日の第2回定例会でした。そこで青木氏は同日選挙について「今後、議会とも十分に協議させていただきたいと存じます。」と不信任決議を前提に発言しています。これにたいし当時野党だった自民党の宮沢信男区議は代表質問で「辞職」を「解職」としたことは議会を冒涜した公約変更であり投票した区民への背信行為であると厳しく批判しています。

本当は知っていた?同日選挙の事実上唯一の方法

 ここで青木区長も、批判する議員も重大なことを見逃しているかあえて触れていません。それは区長自らの辞職によって同日選挙を実現する方法が一つだけあることです。それは辞職後の再選挙に青木氏が立候補しないことです。公職選挙法で再選挙により当選し任期が前の任期と同じになるのは同じ人が再度当選した場合で、別の人が当選すればその人はそこから4年間が任期になるのです。ですから区議会議員選挙に合わせて辞職し同時に区長と区議の選挙を行い青木氏が出馬しなければよいのです。このことを恐らく青木氏は知っていました。質問する区議も知っていたはずです。それでもあえて触れなかったのは同時選挙になると都合が悪かったからです。つまり投票率が上がり固い組織票以外の人が投票すると落選の危険が高まるからです。実際同時選挙より別々の選挙の方が大幅に投票率は下がっています。こうして区長と自民党との蜜月が始まり青木氏の2回目の選挙では自民、公明とも与党となってしまいました。

同時選挙はできなかったのではなくしなかった!

 青木氏は区長と区議の同日選挙の実現だけでなく汚職事件の疑惑を晴らすこと、区長多選の弊害をなくすための多選禁止条例を制定することなどを公約としていました。1期目3年間の間に薬師寺氏の疑惑解明と多選禁止条例を実現し、区議会議員選挙に合わせて辞職して再立候補はしないことが公約に責任を持つ政治家として当然すべきことでした。それらはできなかったのではなくしなかったのです。前区長の死去による突然の区長選挙にいち早く立候補を決めた青木氏は自民公明の支持がない中でどうすれば当選できるか一生懸命考えたのだと思います。その結論が先の3つの公約でした。目黒区の選挙管理委員会に問い合わせて同日選挙の効果が約7000万円であることも確認し公約に盛り込んでアピールしました。思惑通り世論の支持を得て当選しましたが当選してしまえばあとうはどうとでもいいのです。あれこれいいのがれしたり議会に責任転嫁したりしてうやむやにしてしまいました。

しろめくろめの会 高村重明

※目黒区民センターの建て替えが区民の意見を無視して民間施設(おそらくマンション)優先で進められています。その出発点であったコンサルタント会社選定について2020年3月に発行した「目黒区政白書2020」で問題点を明らかにしました。選定されたコンサルタント会社がまとめた「基本構想」が多くの区民、利用者の怒りを買っています。なぜそうなったのか目黒区政白書2020の文書に一部加筆し、みなさんにお伝えしようと思います。

目黒区民センターの見直しが「リーディングプロジェクト」

 目黒区民センターが2016年で築42年を迎え(美術館は築30年)建て替えか改築か検討が求められています。目黒区区有施設見直し有識者会議(委員長、根本裕二東洋大学教授)が2013年にまとめた「区有施設見直しに関する意見書」(以下意見書)で目黒区民センターを含む区有施設見直し実現のための8つの手法として以下をかかげています。(1)受益者負担の適正化。(2)長寿命化。(3)既存施設における公民連携の推進(民間活力の活用)。(4)統廃合・多機能化。(5)未利用地等の活用。(6)広域連携。(7)地域移管。(8)民間施設活用です。(3)の民間活力の活用がえてして住民の財産である公共施設が民間資本の利益の投資先となってしまうのではないかと危惧されました。

 目黒区民センターの見直しは区有施設見直しのリーディングプロジェクトと位置付けられていることからこの見直しが住民本位に行われるのか民間資本主導で行われるのか注目する必要がありました。

※ちなみに区有施設見直し有識者会議の議事録を目黒区役所のホームページで閲覧すると委員長の根本氏の発言の多さと行政の不十分さの叱責、全体を急がせたり誘導したりする発言が目に付きます。会議は毎回多くの区民が傍聴しましたがその1人はパブリックコメントで「部課長はメモを取るのみで意見、反論なし」と指摘しています。

※根本氏は肩書は大学教授ですがPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ=官民連携)やPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ=公共施設への民間資本、技術等の導入)研究のプロであり、政府や民間資本の推進組織の一員です。根本氏を有識者会議の委員長とした時点で区有施設見直しの方向は決められたと言ってもいいと思います。

提案内容と見積もりが選定の85%を占める

 目黒区は目黒区民センターの見直しにあたりプロポーザル方式(企画書の比較検討により委託先を決める方法)で委託先を決めることとしました。その結果応募した4社の中からPwCアドバイザリー合同会社に決まりました。

 1次審査では提案の独創性、実現性等と経費(参考見積)が全体の85%以上を占めています。当然その内容が気になります。

ちなみに2次審査の項目は「専門能力・経験の確認(105点)」「業務への取組意欲(140点)「コミュニケーション能力(175点)」と主観的にどうとでも評価できるものであり、業者選定は1次審査の「提案の独創性、実現性等」と「経費(参考見積)」にかかっていると思われます。

「課題整理に対する提案」がこれからの見直しを決定

 目黒区民センター見直し業務委託プロポーザル募集要項の提出書類は次のようになっていました。

ア 企画提案書

① 業務実施体制

② 配置予定技術者(管理技術者)の経歴

③ 配置予定技術者(担当技術者)の経歴

④ 業務実施方針・業務フロー

⑤ 目黒区民センターの課題整理に対する提案

⑥ 行程計画

イ 参考見積・内訳書

ウ 直近10年以内の実績一覧

 このうち⑤の目黒区民センターの課題整理に対する提案についてはさらに詳しい注釈がついていました。

○目黒区民センターの改築か改修化を判断するための方法・考え方と手順

○既存施設(周辺施設含む)の複合化・多機能化の可能性及び課題

○土地の高度利用を検討する際の条件・制約等に対する考え方

○当該用地の民間活力活用の可能性及び課題

○目黒区民センターの見直しと周辺まちづくりの関連に関する考え方

 こうみると⑤の内容がこれからの目黒区民センター見直しをどう進めるかにとって決定的であることが分かります。ある意味で4社の中から特定の会社に決定した時点で目黒区の区民センター見直し方針は決定したと言っても過言ではないと思います。なぜPwCアドバイザリー合同会社に決まったのか、他の会社の提案とどう違っていたのか、この問題を分析、検討するには必須の情報です。

情報開示の期限を60日間も延期

 私は提出書類のうち⑤目黒区民センターの課題整理に対する提案とイ参考見積・内訳書、ウ直近10年以内の実績一覧に絞って開示請求することにしました。それが2019年1月23日(水)のことです。目黒区情報公開条例では「開示請求があった日から起算して15日以内に(開示)しなければならない。」(第13条)とあるので遅くとも2月8日(金)には開示されるものと思っていました。その後1月29日(火)区有施設プロジェクト課の担当者より「ボリュームがあるので15日以上かかってしまうかもしれない」という電話がありました。以前22ある住区住民会議の全部の決算報告書を開示請求した時も15日間ではできなかったことがあるのでやむをえないのかと思いました。しかし2月2日(土)に到着した2月1日(金)付の青木区長からの書類は「開示等決定延期通知書」となっていて当初2月7日(木)だった決定期限を3月25日(月)まで延期するというのです。延期の理由は「開示請求のあった行政情報は、第三者等に関する情報が含まれることから、当該行政情報の開示等の決定に先立ち、目黒区情報公開条例第15条第1項の規定に基づき、当該情報に係る第三者等に意見書を求めることとしたため。」とありました。しかし封筒の中には情報公開条例の該当部分の写しも入っておらずネットで検索しなければ条文を知り得ないという不親切さでした。

 まず開示請求に対する開示等の決定の延期は第15条ではなくて第13条第2項に次のように規定されています。「実施機関は、やむを得ない理由により、前項に規定する期間内(15日以内)に決定をすることができないときは、当該開示請求があった日から60日を限度としてその期間を延長することができる。」延期された決定期限の3月25日は私の開示請求の収受日(1月24日)の翌日から数えて60日目でありめいっぱい延長したことになります。

知る権利を阻む「第三者」条項の乱用

 問題は延期の理由です。目黒区情報公開条例第15条は「第三者保護に関する手続き」という題で「開示請求に係る行政情報に区及び開示請求者以外のもの(以下「第三者」という。)に関する情報が記録されているときは、当該行政情報の開示等の決定に先立ち、当該情報に係る第三者に対し、…意見書を提出する機会を与えなければならない。」とあるのです。具体的には第7条で行政情報開示義務の例外として「法人その他の団体(以下「法人等」という。)又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人に明らかに不利益を与えると認められるもの。」とあり、法人も第三者であり開示することによって「明らかに不利益を与える」と行政が判断したので開示を延期したと思われます。

 私は2018年、江戸川区に対してある事業の委託契約書及び関係書類の情報開示請求を行ったところ全文が期限内に開示されました。委託契約書には契約金額、受託業者の住所、名称、代表者氏名等が記載されていました。関係書類である委託仕様書には人件費、燃料費、事務費等の算定に係る詳細な月別内訳も記載されていました。江戸川区の情報公開条例も目黒区とほぼ同じで当然第三者条項もありましたが江戸川区はこれを適用することはありませんでした。

見積もりが一番高い会社が落札

 結局3月25日の延長期限ぎりぎりになってほとんど非公開だが一部公開するという回答があり、930円のコピー代と250円の切手代を郵送しました。開示されたのは4社の企業が開示を認めた部分のみでほとんどが黒塗りでした(添付資料参照)。全部黒塗りのページは無駄ということでコピーもされていませんでした。

 ただし見積価格は開示されました。

ア社 19,429,200円

イ社 19,513,440円(PwCアドバイザリー合同会社)

ウ社 19,440,000円

エ社 19,386,000円

 イ社が落札したPwCアドバイザリー合同会社です。なんと見積もりが一番高い会社に落札されたのです。経費で決めたのではないとするとますます提案内容が重要ですがその部分はまったく開示されず、目黒区民センター見直しに係るプロポーザルの決定過程は全くのブラックボックスとなってしまいました。

※入札した4社の金額があまりにも近いのも驚きです。最高額のイ社と最低額のエ社との差はたったの127,440円、受注した額の0.65%にすぎません。これでは談合があったと疑われても仕方がありません。

開示を前提とした入札を

4社による入札の結果は目黒区のホームページに掲載されました。(1,540点満点)

1位 959.0点 PwCアドバイザリー合同会社

2位 900.6点

3位 832.6点

4位 799.4点

 しかしこの採点の対象となった入札に関する情報が開示されなければこの点数表は意味がないことは誰にでもわかります。ではどうすればいいのでしょうか。

 目黒区情報公開条例は条例第1条で「この条例は、区民の行政情報の開示を求める権利を保障するとともに、…目黒区が区政について区民に説明する責任を全うし、公正で開かれた区政を推進し、区民の区政への参加の促進を図り、もって区民と区との協働によるまちづくりに資することを目的とする」という崇高な理念を掲げています。また第4条の2で「実施機関は、行政情報を開示することを原則として、この条例を解釈し、運用するものとする。」ともあります。今回の区の対応は第1条にも第4条の2にも反することは明らかです。

 よって私は入札結果などの検証に必要な企業の情報については第三者情報とせず開示すべきと考えます。それは目黒区情報公開条例の第9条(公益上の理由による裁量的開示)で可能と考えます。第9条は「実施機関は、開示請求に係る行政情報に不開示情報が記録されている場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該行政情報を開示することができる。」とあります。入札を区民がチェックすることは公正な行政を維持するという目的のためでありまさに公益です。入札業者には入札に際し行政に提出した情報は開示対象であることを事前に告知し了解した企業が入札すればよいのです。

番外編 区民の目線で4社を評価してみると

 部分開示された入札資料の読み取れる範囲で私の独断で4社を評価してみました。

【開示率】

各会社が開示しては困ると黒塗りした部分を除き開示された面積を比較してみました。住民が開示請求をしてきたのを知って黒塗りしたわけですからその会社の民主化度と言ってもいいかもしれません。

ア社 37ページ中20ページは全部黒塗りで区の担当者はコピーすらしませんでした。一部記入のあるページも8ページは見出しのみです。つまり提案部分は100%黒塗りで話になりません。見積もりは25%が黒塗り。業務実績も100%黒塗りです。まさに「ブラック企業」で37ページ中開示は0.5ページなので開示率0.5÷37=1.4%。100点満点の1点です。

イ社 提案部分は16ページ中真っ黒が4ページ。半分程度黒塗りは6ページ。一部黒塗りは3ページ。全部開示は4ページです。見積もりは単価部分が黒塗りで50%。実績は名称のみでほぼ黒塗り。32ページ中開示は9.5ページなので9.5÷32=29%。100点満点の29点です。

ウ社 提案部分は12ページですが全部黒のページはなく、半分黒塗りが1ページ、4分の1程度が5ページ、あとは全部開示です。見積もりは明細も含めて全部開示です。実績部分9ページは事業名や内容、特徴まで全部開示です。24ページ中22ページが開示なので開示率は22÷24=92%。100点満点の92点と高得点です。

エ社 提案部分16ページ中半分黒塗りが2ページ、4分の1程度が9ページ。5ページは全部開示です。見積もりは内訳が黒塗りです。実績は業務概要が黒塗りです。全20ページ中開示は10.5ページなので開示率は10.5÷20=52%。100点満点の52点です。

【住民参加】

 区民センター見直しの進め方で欠かせないのが住民参加ですが4社の考え方を評価してみます。

ア社 提案部分は全部黒塗りなので評価できず。100点満点の0点です。

イ社 提案の7として「住民参加、住民意見反映の手法」という項目に1ページをさいています。しかし「住民関与に関する基本的な考え方」として「住民・利用者を巻き込むことで、区民全体の関心を高め、事業の推進力とすることは非常に有効な手法と考えます。」という表現にあるように住民を利用しようという考え方が見え見えです。また「特定ユーザーや利害関係者の意見だけが強く反映されたり、意見集約に長い期間を要してしまう恐れもあります。」と住民敵視、関係住民排除の姿勢があらわです。結局具体的な住民参加の手法はパブリックコメントやアンケート、ワークショップでの意見交換といった非常に限定されたものしか想定していません。この会社は住民参加を敵視しているので100点満点で0点です。(マイナスかも知れませんが)

ウ社 提案のひとつに「住民参加・住民意見反映の方法」というページがあります。平成30年度は既存の「目黒駅周辺地区街づくり懇談会」の活動を把握することにとどめ翌年以降ワークショップや説明会、パブリックコメントなどを行うとしています。イ社とにていますが住民敵視の姿勢は見えないので10点満点の20点とします。

エ社 提案のテーマ7として「住民参加、住民意見反映の手法」という項目に2ページをさいています。住民参加等の主な手法として7種類をあげています。①まちづくり検討会(有識者、団体代表、部会代表、地区住民代表、行政)②住民ワークショップ③入居団体ヒヤリング④区民アンケート⑤利用者アンケート⑥まちづくり講演会⑦情報かわら版⑧パブリックコメント⑨意見箱、と具体的です。住民参加全体の進め方として情報発信の方法やプロセスの透明性の確保など具体的に提案しています。実効性はわかりませんが他社に比べ住民参加への姿勢が前向きなので100点満点の50点とします。

【高さ規制への対応】

 民間活力の活用などの部分は難しくてわからないので目黒区の特徴である高さ規制への対応を見てみます。

ア社  全部黒塗りなので0点。

イ社  土地の高度利用について3ページにわたって記載されていますが半分以上黒塗りです。開示された部分を見ると「本事業敷地の高い資産性を活かし、民間用途に余剰容積を最大限確保する」「定期借地権を組み合わせ庁舎整備を実施した豊島区・渋谷区の事例を調査」するなど高さ規制を緩和させようという姿勢がありありです。他のところで「遅くとも33年度の事業者公募前に本事業で適用できる高度利用の制度(例えば地区計画の作成や都市計画の見直し等)を準備しておく必要があります。」とまで言い切っています。景観や周辺との調和よりも企業の利益優先の姿勢が見えます。ある程度は企業のもうけも必要ではあるので10点とします。

ウ社 高度利用についての考え方のところで「貴区はこれまで街並みの保全及び生活環境の確保を目的として都市計画行政を一貫して推進されており、対象地周辺地区においても高度地区絶対高さ制限を設定しているなど、特別区においてもまちづくりに特に配慮してきた自治体と理解しております。」と正しく評価しています。そして「この都市計画理念は、対象地を含む大半の土地においては今後も継続していく事が必要と認識しており、本業務においてもその前提で検討を行うことを大前提とすべきと考えています。」としています。ただし、対象地域が第2種住居地域であることは変更の可能性もありうるとしています。高さ制限も「原則現行のまま検討を行う」としています。一応現時点での考え方を評価して100点満点の80点とします。

エ社 高度利用の検討の部分では高さ規制などには全く触れず「民間施設の収益性も考慮した施設計画とします。」とあるように利益優先の姿勢が見えるのでイ社と同じ10点とします。

【総合評価】

 以上の3つのポイントで評価すると次のとおりになります。

会社名  開示率(民主化度)  住民参加     高さ規制        合計

ア社         1点         0点       0点        1点

イ社       29点         0点               10点      39点

ウ社       92点        20点      60点     192点

エ社       52点        50点      10点     112点

 

 ウ社が1位、エ社が次点でした。さて実際に落札したPwCアドバイザリー合同会社はどれかというと、イ社です。PwCアドバイザリー合同会社は情報の開示はしない、住民参加は敵視する、高さ規制より企業優先の高度利用というかなり問題のある会社です。そのPwCアドバイザリー合同会社がなぜ選ばれたのか、それは目黒区がこれからすすめる区有施設の建て替え方針に一番近いからです。2018年から2023年まで6年、8億円のコンサル料を受け取ったPwCアドバイザリー合同会社がまとめた「新たな目黒区民センター基本計画(素案)」は予想どおり民間収益施設(おそらくマンション)中心のプロジェクトに区が協力し、区民施設が縮小する計画となっていました。形式的なパブリックコメントやワークショップは行われましたが参加者の意見は完全に無視されました。目黒区は800億円の積立金がある裕福な自治体です。区民や利用者の意見をよく聞いて使いやすくエコな施設を自力で作ることは十分可能です。コンサルタント会社もほとんどすべての情報を開示し20mの高さ規制を評価するエ社や住民や利用者と一緒に計画を進める具体案を幾つも提案したエ社のようにまともな会社もあるのです。いったん立ち止まって区民、利用者と考え直すべきだと思います。

4月21日(日)いよいよ目黒区長選挙がはじまりました。朝から西崎つばささんのチラシの証紙貼りを手伝いました。証紙を貼って腕章を巻かないとチラシも配れないという日本の公職選挙法はどうかと思います。そのチラシがこちらです。


自治体研究社が発行する月刊「住民と自治」4月号(3月15日発売)に目黒区政白書2024について書いた私の記事が掲載されました。記事の全文は以下のとおりです。

区長選挙に向けて「目黒区政白書2024」を発行したら情勢が動いた?

明るく住みよい目黒を考える会(しろめくろめの会)世話人 高村重明

公約を果たさず20年間も居座り続ける現区長

 目黒区長選挙は2024年4月21日投票で行われます。2020年の前回選挙では5期目をめざす現職区長(自民、公明推薦)の3万178票に対し立憲、共産、社民、ネットの野党共闘が推す女性候補(元立憲区議)が2万6908票と3千270票差にまで迫りました。現区長は自殺した前区長の疑惑を解明する、区議会議員選挙と区長選挙を同時にするため任期途中で辞任する、多選禁止条例をつくるという公約を一つも果たさず20年も居座り続けています。2010年には財政危機を宣言し3年間で180億円もの負担を区民に押し付けました。結局赤字には一度もならず積立金は654億円(2023年度末)にも達しています。しろめくろめの会では前回選挙でも区政白書を発表しましたが選挙直前だったためあまり力になりませんでした。そこで「目黒区政白書2024」づくりは2023年1月にスタートし11月1日に発行することができました。

情報開示とオシントを駆使

 区政白書づくりでは情報開示とオシント(オープン・ソース・インテリジェンス=公開された情報を分析して事実を明らかにすること)の手法を活用しました。民間委託された学校給食調理業務で3年間に122件もの事故が発生し、異物混入74件、アレルギー除去食ミス17件など子どもの命や健康が危ないこと、現職区長が1年に355日も専用の車を乗り回し、年間5トンものCO2を排出、千306万円もリース料を払っていること、10年間に退職した幹部職員58人中34人が外郭団体に天下り現在も在職している11人に年7千924万円も給料を支払っていることなどを情報開示で明らかにしました。東京都選挙管理委員会のホームページに載っている3年分の政治資金収支報告書から現職区長への寄付は自分が出した150万円のほかは正体不明の個人からの毎年35万円しかなく、政治活動は選挙のときの2回の全戸配布しかないこと、目黒区のホームページに載っている議員の政務活動費報告書と領収書から選挙活動との線引きが難しいため按分が求められている電話代とガソリン代を全額政務活動費として支出した議員が3人いてそのうち2人が落選したことなどをオシントにより明らかにしました。

区民の財産が民間デベロッパーのもうけの手段に

 目黒区の今後を決める焦点が目黒区区民センターの建て替え問題です。図書館、児童館、美術館などからなる複合施設(区民センター)部分と公園部分、隣接する小学校部分の計約3万㎡が官民連携の名のもとに民間デベロッパーの利益追求の場となろうとしています。20mの高さ規制が50mに緩和され新、たな区民センターには民間施設尾(おそらくマンション)が併設されます。公園には体育館が建ち小学校は区民施設を含む複合施設になります。民間施設の70年間の定期借地権料で区の負担を減らすという構想をまとめたのは秘密主義で住民敵視、高さ規制緩和が問題のコンサルタント会社でした。民間施設の利益優先のため公共部分は最小限に圧縮され、社会教育館や勤労福祉センターは廃止されます。まだ使え、それ自体が美術的価値のある美術館も取り壊されます。区民センターの建て替えは今後の区有施設建て替えのモデルケースとなります。財源はあります。利用者、区民にとって最も使いやすく安全な施設を目黒区の責任で作る方向に変えられるかどうかが4月の区長選挙にかかっています。

区長選挙に向け市民連合の新たな動きが

区長選挙に向け区民の方々が結集し昨年8月に50人規模の集会を開いて「みんなの目黒をつくる会(みなめぐ)」が立ち上がりました。これまでにない動きです。私たちしろめくろめの会は5人の世話人と数人の協力者とでささやかに運営していますが前身の住民運動団体時代は区内の労働組合や民主団体からなる大きな団体で毎年のように住民集会を開催してきました。その時代を含めると半世紀以上も目黒区で活動してきましたが「みなめぐ」のメンバーはほとんど知らなくて、こんな運動を50年もしている人たちがいたんですねと驚かれました。お互い新しい世界が広がった感じでした。しろめくろめの会では岸本杉並区長誕生の話を杉並革新懇の小関啓子さんに、中野区長選挙で2連勝した話を「区民の声・中野」共同代表の韮澤進さんに報告していただき、「みなめぐ」のメンバーともども大いに励まされました。現時点(2月中旬)で「みなめぐ」の候補者は決まっていませんがこれまで現職区長の与党であった自民党が今回は支持しないで幹事長が立候補を表明しています。区政白書で明らかにした現職区長のひどさに影響された可能性もあります。私たちの取り組みが住民の輪を広げ新たな区政誕生の糧となればと思っています。

おまけ ようやくSNSにめざめたが

「みなめぐ」は働く女性が中心でSNSとオンライン会議、時々ミーティングという今時の運動スタイルです。私たちは学習会をして本を出し、チラシで宣伝するという旧態依然とした運動です。それでも目黒区内に7店ある書店のうち3店で区政白書を扱っていただけました。「今の区政を批判する本ですが」といっても「ああ、いいですよ」といってもらった時はとても嬉しかったです。目黒区内に7店しかないことも驚きでしたがどこの書店も経営は大変で3店のうち1店は昨年末に閉店となってしまいました。やはりSNSも必要と考え、しろめくろめの会もX(ツイッター)やブログを始めました。更新も大変ですしフォロワー数も増えませがめげずに続けようと思います。よかったらのぞきに来てください。https://siromekurome1192.amebaownd.com/

「目黒区政白書2024」(A4版フルカラー160ページ、千200円)は東京自治問題研究所(☎03・5976・2571)で扱っています。

4月21日投票の目黒区長選挙の争点の一つは目黒区区民センターの建て替え問題です。大手デベロッパーのもうけのために公共が犠牲になるのか、利用者の声を聴いて使いやすく環境にやさしい施設にするのかが問われています。3月9日(土)斎藤幸平さんの話を聞いて一緒に考えましょう。参加費は500円です。


 あなたは目黒区に情報開示請求をしたことがありますか。目黒区情報公開条例第1条は「目黒区が区政について区民に説明する責任を全うし公正で開かれた区政を推進し、区民の区政への参加の促進を図り、もって区民と区との協働によるまちづくりに資することを目的とする。」と格調高くうたっています。でも実際に開示請求をすると長期間待たされ、何を請求すればよいのかは教えられず、必要な情報は隠され、多額の費用を払わされます。

何を請求すべきかを教えてくれずムダ足に

今回の目黒区政白書を作成するにあたり退職幹部の天下り(正確には目黒の外郭団体への再就職)の実態を調べようと思いました。まず2023年5月26日に目黒区社会福祉協議会に行って常務理事の給料について開示請求しました。外郭団体にも目黒区と同様の情報開示規定があることはネットで調べてわかっていました。窓口で要件を話すと課長(この人も天下りの1人であることが後で判明)が出て来て「何に使うのか」など質問されました。退職幹部の処遇が正当なものであるのか調べたいと答え、開示請求書に常務理事の給料と記入して提出しました。5月29日に電話があり5月30日に出向くと担当係長が対応し課長は後ろで見ていました。これですといわれて開示請求通知書をみると「規定により支給していない」と書かれていました。そんなはずはないと抗議すると課長が後ろから出てきて「開示請求書に常務理事の報酬とあったから無報酬と答えた。事務局長としては給料を支給している。」と臆面もなく答えました。ならば最初からそう言えばいいのではないでしょうか。事務局長にはいくら払っているのかと問い詰めると「個人情報だから答えられない。〇〇課の〇〇係長の給料はいくらかと言われても答えないのと同じ。」という回答でした。個人ではなくポストの報酬だから開示すべきと主張しても変わりませんでした。同じことは社会福祉事業団でも起こります。2023年5月26日に開示請求をして13日後の6月8日に電話で開示すると連絡があり6月13日に期待して出向きました。開示請求してから15日以内に開示しなければならないのでぎりぎりでした。こちらは「社会福祉法人目黒区社会福祉事業団役員等の報酬及び費用弁償に関する規定」の写しを開示してきましたが出てきた回答は社会福祉協議会と同じで常務理事は無報酬というものでした。同じ回答をするのに社会福祉協議会は3日なのに社会福祉事業団は13日もかかるのも理解できません。結局退職幹部の天下り先の報酬と10年間の氏名は人事課に開示請求して入手しました。開示請求する区民の立場に立って求めるものは何か理解しようとするのが行政の立場のはずです。目黒区情報公開条例施行規則第14条に「職員は、…当該開示請求が円滑に行われるように…相談に積極的に応じなければならない。」とあるのを知らないのでしょうか。常務理事は無報酬だが事務局長なら給料は払っている。しかし個人情報なので開示できないと最初に言ってくれれば納得はできませんが時間と労力は省けました。

全面黒塗りするのに3か月待たされ、結局審査会に審査請求することに

もう一つの事例です。学校給食調理業務が直営から民間委託に切り替わったのが1999年からで今年で24年経ちました。当時の助役や教育長と団体交渉をした当事者である私は本当に安全でおいしい給食が提供できているのかを検証するため、学校ごとの事故報告書や業務評価報告書書などを目黒区教育委員会に3年分を開示請求しました。2023年2月20日に開示請求し最終的に開示が決定されたのが同年5月19日です。ぴったり3か月後の最終期限ぎりぎりです(実際に郵便が手元に届いて私が知ったのは5月24日で3か月を超えていました)。目黒区情報公開条例では第13条(開示等の決定の期限)では「開示決定は開示請求があった日から起算して15日以内にしなければならない。」とあります。でもこの条文には抜け道があります。第13条の2でやむをえないときは60日を限度として延長できることになっています。それでもできなければ第13条の3で開示請求者の同意があれば更に30日伸ばせます。今回の教育委員会の開示決定がぴったり3か月後だったのは例外の例外を精一杯使ったからです。しかも私は同意したつもりはないのですが電話で2か月では難しいと言われやむをえないですねといったような気がします。でも本人の同意が前提とは知りませんでした。ではなぜ3か月もかかったのでしょうか。それは大量の文書を黒塗りしなければならなかったからです。各小中学校が委託業者を評価した報告書は判定結果だけでなく評価基準も全部黒塗りでした。


後だしジャンケンで不開示理由を追加

黒塗りの理由は条例第7条の不開示情報に該当するからだというのです。具体的には第7条第3号アに該当すると言われました。アの条文を読むと「入札予定価格、立入検査の計画、職員人事評価記録、教育指導記録又は交渉若しくは争訟の処理方針等で、公にすることにより、区政の公正又は適正な執行を著しく妨げるおそれのあるもの」とあります。条文はもっともなように思えますが学校給食委託業者の評価内容がアのどれに該当するのか私には理解できませんでした。目黒区でも評価内容を公開している事例もありますし全国でも開示すべきとする決定がいくつも出ています(注参照)。そこで6月28日、担当者に直接会って説明を聞きました。すると評価内容を業者が知るとどこを頑張ると高得点となるかわかってしまい公正な行政ができなくなるというのです。業者が得点配分を知って仕事にがんばることがなぜ公正な行政の妨げになるのでしょうか。説明を聞いていてアに例示されていなくてもとにかく担当者が「公正な執行」の妨げになると思えば何でも非開示にすると宣言したとしか思えませんでした。結局非開示にしたことは再検討することで持ち帰ってもらいました。8月22日、教育委員会から部分開示決定通知書(変更)なるものが出てきました。不開示としていた業者の評価項目は開示するというのです。私の訴えが認められたわけですが肝心の評価点は不開示のままでした。一貫していません。新たに教育委員会は「業務改善提案型契約方式実施要領」に「受託業者へ総評価点は知らせないこと」とあることを理由に持ち出してきました。当初の不開示決定になかった理由を新たに持ち出したこと自体、いかに不開示に根拠がないかを自ら示すものです。これには3点誤りがあります。条例で不開示の例に挙げられている職員人事評価記録は本人が希望すれば伝えていること、業者の総評価点自体は不開示でも業者への評価は5段階の評定区分として開示されていること、開示・不開示の決定は条例・規則のみに基づいて決定すべきであり行政内部の別の基準を理由にすべきではないことです。私はやむなく8月30日に情報公開・個人情報審議会に審査請求をせざるをえませんでした。