港区長選挙結果の分析
2024年6月10日
しろめくろめの会世話人 高村重明
2024年6月2日(日)に行われた港区長選挙で6期目をめざした自民・公明が推す現職を無所属・新人の清家愛氏が1,528票差で破る予想外の結果となりました。その結果について分析してみました。
候補者名 所 属 得票数 得票率
清家愛 無所属(元区議、立憲、共産自主支援) 29,651票 48.73%
武井雅昭 無所属(現職、自民、公明推薦) 28,123票 46.22%
菊地正彦 無所属(元都議) 3,070票 5.04%
保守が強い港区だったが
港区は2010年から2022年の間に住宅地の地価が1.65倍と東京都で一番上昇しています(目黒区は1.36倍)。ところが人口は2000年の約16万人から2020年の約26万人へと20年間で1.63倍増えています(目黒区は。1.15倍)。区民の平均収入は約1,185万円で23区平均の約712万円を大きく上回り23区1位です(目黒区は約639万円で5位)。つまり社長や管理職など高収入の住民が増えていると思われます。そのため政治的傾向は保守的で2023年の区議会議員選挙での自民党の得票率は30.29%と目黒区の自民党の22.77%を上回っています。直近の総選挙(2021年、小選挙区1区と2区)でも港区では自民が39.89%の得票率で第1位でした。都議選(2021年、定数2)でも自民党候補は28.79%の得票率を得て第1位で当選しました。
現職区長が17%も得票を減らしたのは
今回の区長選挙で落選した武井雅昭氏は元港区職員(区民生活部長)を経て2004年に55歳で区長選に初当選して以来5期20年間区長を務めました。2004年の最初の選挙のときは有効投票にしめる武井氏の得票率は41.81%でしたがその後の得票率は2008年71.30%、2012年77.74%、2016年76.83%、2020年63.46%と信任投票のような結果でした。今回武井氏が8,734票、得票率にして17.24%減らしたのはなぜでしょうか。第1に推薦政党の減少です。これまで武井氏をずっと支援してきた国民民主、都民ファースト、社民が推薦しませんでした。自民と同列に見られたくなかったのでしょう。第2に自民党の活動の弱さです。裏金問題など区民からの風当たりが強く目黒区長選挙でも自民党議員は地域でほとんど動きませんでした。第3は多選批判です。武井氏が当選すれば23区最多の青木目黒区長の6選に並ぶところでした。
港区にしては「高投票率」が勝利に貢献
では当選した清家愛氏の29,651票はどこから生まれたのでしょうか。第1は投票率です。30.62%という投票率は一般的には低投票率ですが港区ではそうはなりません。前回(2020年)は30.04%とかろうじて30%を超えましたがそれまでは5回とも20%台でした。特に武井氏が3期目に挑戦した2012年の区長選挙は22.13%とワースト記録となりました。このときの投票者数は37,625人で武井氏は77.74%にあたる29,250票を獲得しています。今回武井氏が得票した28,123票とほぼ同じです。ですから今回の投票率は30.62%でしたので2012年のときから増えた23,219人がほとんど清家氏に投票したということです。女性の投票率も前回より0.67%、票にして1,344票増えています。第2は共産党と立憲民主党の自主支援です。清家氏は2011年に初当選した時は民主党でした。当選後「みなと政策会議」という会派を立ち上げ自ら幹事長となりました。2018年に民主党が解散してからは無所属となっています(みなと政策会議は2019年の時点で立憲民主4人、国民民主3人、無所属3人の10人。2023年4月以降みなと政策会議は解散し、新たに「みなとみらい会議」という会派が国民民主3人、都民ファースト1人、こどもの党1人、無所属2人の7人で立ち上がっています。清家氏は無所属ですが2023年の区議選後は立憲民主党という会派に属していました(清家氏が区長選に立候補したので現在は3人)。共産党はこれまでの6回の区長選挙で独自候補を擁立してきました。得票は5,488票(2020年)から11,803票(2008年)と一定の支持層があります。今回は清家氏を自主支援し候補を擁立しませんでした。第3は都民ファーストが候補を出さなかったことです。目黒区では2024年4月の区長選挙に都民ファーストの都議が立候補し、結果として現職区長の当選を側面支援する結果になりました。港区でも都民ファーストは2021年の都議選(定数2)で女性候補が18,254票を獲得し2位当選しています。もし彼女が多選批判を掲げて立候補していれば清家氏の当選は難しかったと思われます。
票の動きを推測すると
以下、私が推測した票の動きです。前回と今回の投票者総数比(h=60,844人÷58,078人=1.047)を前回の武井氏の票36,857票にかけると今回とるはずだった票38,589票が出ます。そこから今回の武井氏の票28,123票を引いた①10,466票が清家氏に行ったと考えます。菊地正彦氏は2回連続立候補しています。同じように前回票5,437票×h(1.047)=5,692票。ここから今回得票した3,070票を引いた②2,622票が清家氏に行ったと考えます。前回立候補した大滝実氏(共産推薦)、飯田佳宏氏、柏井シゲタツ氏の3氏は今回立候補していないので合計15,785票×h(1.047)=③16,526票が清家氏に行ったと考えます。①+②+③=29,614票で今回清家氏が獲得した29,651票に近くなります。まとめると現職候補の4分の1以上が投票先を変えたのと共産党が立候補せず自主支援としたこと、都民ファーストが立候補しなかったことが清家氏の当選の大きなポイントになったと思われます。
0コメント